相続財産に「不動産」が含まれる場合、親族間のトラブルを招きやすくなります。そして、問題を曖昧のまま放置すると、孫の代まで絡んで収拾がつかなくなるケースもあります。今回は、親亡き後の「共有名義の実家」を巡って起こった兄弟間トラブル事例と解決策を紹介します。※本連載は、松原昌洙氏の著書『不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続』(毎日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「持ち分買い取り」…持分を買い取って単独名義にする

他の共有者全員の持分を買い取って自分の単独名義にする解決方法です。実家(共有名義不動産)に住んでいる共有者がよく望む解決方法です。

 

〔事例〕
父親の死亡後、実家で長男家族と同居中だった母親が亡くなり、相続が発生しました。法定相続人は長男・長女・次男の3人で、長女と次男はそれぞれ別の所に住んでいます。共有名義になった実家について3人の主張は次のようなものです。

・長男は、実家を自分名義にしたいと思っており、他の2人から持分を買い取ることを望んでいる。ただし、身内ということで相場よりは安くしてもらいたい
・長女は、自分の持分を長男に売ることには異存はないが、長男の提示価格は安すぎるので、もう少し高く買い取ってほしい
・次男は、実家は売却して売却代金を3人で均等に分けたいと思っている

 

問題点のポイント

買いたい価格と売りたい価格を一致させられるかどうかがカギです。自己持分の売却を 希望している共有者は適正価格(実勢価格より安くてもよいが、ある程度納得のいく価格)であれば身内に売ってもよいと考えています。

 

一方、他の共有者の持分買い取りを希望しているほうは相場よりできるだけ安く買いたいと思っています。また、主張の違いが感情のもつれに結びつかないように注意することが重要です。

 

解決策の提案と解決のプロセス

このような主張の食い違いから議論は平行線をたどり、一向にまとまる気配はありません。相談を受けた筆者は、まず不動産鑑定士に依頼して実勢価格を明らかにすることを提案しました。共有者は適正な持分価格について知識不足だからです。

 

次に、当事者同士だとどうしても金額より前に感情が入り込みやすくなります。親族間トラブルは”ささいなこと”で根深い亀裂に発展します。ささいなことから過去の兄弟姉妹間のお金の貸し借りや、親から特別扱いされた人間に対する不満がここぞとばかりに湧き起こってきます。

 

こうなると売買価格を冷静に考えることができなくなり、収拾がつかなくなります。

 

こうしたことに陥らないためには、次のようなことを心がける必要があります。このケースでは、客観的な価格を提示しながら双方の納得を引き出すことでうまく話がまとまり、長男が長女と次男の持分を買い取って共有名義を解消することができました。

 

・当事者同士で無理をせず、不慣れな持分価格の算出は専門家(不動産鑑定士)に依頼を

・譲り合う気持ちでお互い”ある程度の価”で着地する

・当事者同士で話がこじれたら専門業者に間に入ってもらう

・勘定(価格)と感情を一緒くたにしないこと

 

松原 昌洙

株式会社中央プロパティー 代表取締役社長

 

 

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不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

松原 昌洙

毎日新聞出版

本書では、「富裕層ではない一般の人」が親の死亡で実家の不動産を相続したときに起こるトラブルに焦点を当てて、その背景や原因についてわかりやすく説明し、解決策や予防策を紹介します。

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