ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

老親はキャッシュカードを持っていなかった

エピソード

 

わが家の場合は、銀行口座や証券会社での投資信託など、8割父の名義、2割が母の名義という感じでした。70歳を過ぎた頃、親から通帳や印鑑、保険、不動産の登記簿など、書類の保管場所だけは教えてもらいました。古い人間ですので、この頃はまだお金の入出金は銀行の窓口で行っていたようでキャッシュカードは持っていませんでした。

 

一時期、川崎に呼び寄せたことがあり(半年後には静岡に帰る)、そのとき、一緒に銀行と郵便局のキャッシュカードの申し込みを行いました。一緒に手続きをすれば、カードを預かることも暗証番号も把握できます。親自身がしっかり管理している場合でも、入院に備えて、全部とはいわずとも、せめてメインバンクの通帳と印鑑、キャッシュカードと暗証番号は情報共有させてもらうと、万が一のときお金で慌てるリスクが少なくなります。

 

退院の見込みがなかったり、施設に入ったり、わが家のように呼び寄せたりすると実家が空き家になります。私の実家は地方ではありますが駅が近く賃貸の需要があったため、幸いにして貸すことができています。少し前までは、子が戻る予定も使い道もない場合、空き家のままにしておけば更地よりも税金も安くなりました。解体のお金もないのなら放っておくこともできたのです。

 

ですが現在は、行政が介入できるようになり、不適切な状態で放置していると指導や指示が来る場合があります。それに従わないと税金が高くなり、場合により解体されて費用を請求されることもあるのです。

 

空き家は動物がすみつく、植物が伸びすぎて近隣から苦情が来ることもあります。お金がないなどと放っておくと妨害排除請求訴訟を起こされかねません(2015年空き家等対策の推進に関する特別措置法)。固定資産税や管理費用、補修などの維持費、解体費用(一般的に100万円以上)など、持ち家だからと安心はしていられません。親の家が負の資産になることもあります。

 

※参考:相続した実家(親の居住)を3年目の年の12月31日までに売ると譲渡益が3000万円まで控除される法律もあります。この機会に不動産についても意識しておきましょう。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

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