ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

親の家は都心でも郊外、地方は売れない借り手がいない

売れない、借り手がない、親の家は負の資産

 

「うちの親は持ち家があるから老後は心配ないよ」

 

そんなふうに思っている方は多いかもしれません。親がもし要介護状態になったらその家に住み続けますか? 施設入居や遠距離の場合は呼び寄せることもあるでしょう。空き家になったらどうしますか? 首都圏など大型都市圏の一等地であれば何も心配いりません。今は便利な都市部に人口が集中しているため、都心でも郊外、ましてや地方・山は売れない、借り手がつかない状態です。

 

持ち家だから安心と思っていた不動産が負の資産になることもあります。土地建物があるということは固定資産税や場合によっては公共料金が必要です。空き家になると動物駆除や雑草の対応など、自分の時間を使って手入れに向かうこともあれば、業者にお金を払って管理を依頼する場合も出てきます。いらないから行政に寄付をしようと思っても、それも役所が引き取るといってくれなければダメなのです。一度、親の不動産の保有についても考えてみてください。

 

親の自宅を活用する制度

 

貯蓄など手持ちの現金は少ないけれど持ち家がある場合、資金調達になる制度があります。

 

まずはリバース・モーゲージ(リバース=逆の モーゲージ=住宅ローン)。これは、自宅を担保に老後資金を借りることができる制度です。年金が少ないなどの他、ゆとりある老後の生活を楽しみたい人にも向いています。親が生きている間に返済する義務はなく、死亡後、遺族が手続きをして担保不動産を売却しその代金で一括返済します。ただし、地域や築年数、広さ、相続人全員の同意が必要など、条件があるので民間の取扱金融機関に確認してください。

 

続いて、不動産担保型生活資金です。持ち家と土地があっても現金収入が少ない高齢者が、その居住用不動産を担保に生活費を借り入れることにより、世帯の自立支援を図っていく貸付制度です。リバース・モーゲージと考え方は同じですが、申込相談先が市区町村社会福祉協議会となります。

 

最後は、マイホーム借り上げ制度です。国土交通省が支援する一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が運営する制度で、マイホームをJTI経由で他人に貸すことができ、JTIから終身にわたって賃料が支払われるというものです。生涯にわたり家賃収入が見込め、住宅ローンの返済や住みかえ資金にあてることも可能です。それぞれメリット、デメリットがあるので利用したい場合は、窓口の担当者に納得するまで説明を受けてください。

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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