色覚異常というと、色がまったく判別できない状態を想像する人が多いようです。しかし実際には「判別しづらい」というケースがほとんどで、自覚なく生活を送っていることも珍しくありません。実は、気づかれないだけで、ほぼ全員が加齢に伴い色覚異常になることをご存じでしょうか。

色覚低下により「階段の境目」が見えず転倒

さらに、転倒事故にも注意が必要です。高齢者だけでなく、50代頃から階段の踏み外しや転倒をする人が多くなります。この転倒にも加齢による色覚異常がかかわっている可能性があります。

 

少し暗いところでは、下り階段の最後の段差は影になります。すると、段の境目が認識できず足を踏み外してしまうのです(【⇒「見え方の違い」シミュレーションを見る③】)。さらに運動能力の低下が拍車をかけ、骨折や脳挫傷などの重大な事故につながってしまいます。

 

こうした加齢による色覚の変化は、中年と呼ばれる年代から少しずつ進行しています。色覚異常がかなり進んでいても、本人は「昔のように見えているつもり」のため、なかなか自覚することができません。

 

最近は、実年齢よりもずっと若々しく活動的な中高年世代も増えていますが、年齢とともに色の見え方が変わっていることを自覚して、足元に注意して行動するようにしてほしいと思います。

 

また、最近高齢者施設などで問題視されていることに高齢者の食欲の低下による衰弱がありますが、加齢による色覚異常が進行すると、茶色いサングラスをかけて生活しているような状態になりますから、食べ物の色も鮮やかには映らず、おいしそうに見えないことにより食欲の低下を招くとも考えられます。

 

高齢で体力が落ちている上に、食事が摂れなければさらに体力がなくなり、結果として風邪などの比較的軽い病気でも命を脅かされるようになりかねません。

 

 

市川 一夫

日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士

 

 

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    ※本連載は市川一夫氏の著書『知られざる色覚異常の真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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