「ヘッジファンド」とは、様々な運用手法を駆使して相場の下落局面でもプラスの収益を目指すファンドのことです。今回は、ヘッジファンドを利用している投資家について見ていきます。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『オルタナティブ投資入門―ヘッジファンドのすべて』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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授業料や寄付金で運営されている「大学財団・基金」

日本人にとっては意外だが、ヘッジファンドの主要投資家のひとつが欧米の大学であることは金融業界ではよく知られている。ハーバードやイェール等米国の大学の多くは私学であり、授業料・助成金・寄付金で運営されている。

 

最近では、多くの大学で蓄積された金融資産の規模が大きくなっているが、大学としての競争力の源泉は財務力であるとの認識も根強く、将来に備えて効率運用を図る大学が増加している。

 

3大財団の中でも最大のハーバード大学の運用総額は307億ドル(2012年6月時点)に達しており、イェール大学も190億ドルを超える資産規模となっている。

 

全米大学ビジネス・オフィサー協会(NACUBO)が米国823大学、運用総資産4081億ドルを対象に行ったアンケート調査(2011年6月末)によると、10億ドル超の運用資産を持つ大学基金ではポートフォリオの20%をヘッジファンドに投資している。プライベート・エクイティ16%、不動産8%、エネルギー・天然資源9%などと合わせると全資産の約6割をオルタナティブ投資に回している。

 

 

運用方針としては、基金の性格上、元本の保全が最優先の運用目標に掲げられている。その方針に基づいて分散されたポートフォリオを組成して運用が行われているのだが、オルタナティブ投資への配分は総じて高く、特に運用資産規模の大きい大学基金においては50%超の資産配分が実施されている。

 

3大基金のひとつ、イェール大学は1991年以降の過去20年間にわたり、年平均14.2%のリターンを上げているが、ヘッジファンドを個別の資産クラスとして最初に位置づけた機関投資家として著名な存在だ。1990年7月にポートフォリオの15%をヘッジファンドに振り向ける決定を行ったのである。

 

直近の2011年次報告書によると、そのポートフォリオは非常に特徴的である。オルタナティブ投資に総資産の8割以上を配分しており、その内訳をみると、ヘッジファンドを含む絶対収益が17.5%、プライベート・エクイティが35.1%、その他に不動産・天然資源等への実物投資が28.9%となっており、伝統的な株式・債券投資は19.6%にすぎない。

 

イェール大学は、債券以外の資産では外部の優秀なマネジャーに運用委託し、長期的かつ良好な関係を構築することに努めているという。

 

一方、全米最大のハーバード大学の基金を運営するHMC(ハーバード・マネジメント・カンパニー)は、2012年6月までの過去20年間にわたり年平均12.3%のリターンを上げているが、運用姿勢はイェール大学と異なり、多数の有能なスタッフによるインハウスでの投資戦略の実行と外部マネジャーへの委託を組み合わせて運用してきた点に特徴がある。

 

長期的指針となる政策ポートフォリオにおけるオルタナティブ資産は56%だが、実際には株式や債券の資産クラスでもヘッジファンド的なロング・ショートのエクスポージャーを有しており、基金全体が巨大なヘッジファンドと理解することもできる。天然資源投資のために、森林投資の専門家チームを雇っているほどの徹底振りである。

 

元本保全を目指す大学基金の運用は、投資委員会のメンバーによって政策決定されるが、こうしたメンバーにはウォール街関係者も多数含まれる。投資のリスク・リワードを理解していることが、オルタナティブ投資への先駆的な取り組みを進めてきた背景にあると考えられる。

 

また、とくに米国では、金融業界と学界の融合が相当程度進んでいる。一体化していると言っても過言ではない。これも、大学側のオルタナティブ投資を受け入れる素地といえよう。

 

大学基金は、投機的に高い運用成果を求めてオルタナティブ投資を積極化しているのではなく、元本保全を優先した長期的リスク分散投資として、ヘッジファンドなどオルタナティブ投資を積極活用しているのである。

 

山内 英貴

株式会社GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO

 

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