65歳以上の高齢者の主な死因として、「悪性新生物(がん)」、「心疾患」、「老衰」に続く第4位にあげられるのが「脳血管疾患」です。生活習慣が原因の発症が多く、初期症状に気づくことができれば重症化を防ぐことができます。今回は医師である梶川博氏・森惟明氏が、「脳血管疾患」を見つけるための検査について解説していきます。

「ABI、baPWV検査」で分かることは…

ABI検査(足関節上腕血圧比)は足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算します。動脈の内膜にコレステロールを主成分とする脂質が沈着して内膜が厚くなり、粥状硬化ができて血管の内腔が狭くなる「アテローム動脈硬化」の進行程度、血管の狭窄や閉塞などが推定できます。

 

動脈硬化が進んでいない場合、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると足首の方がやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があると足首の方の血圧は低下します。動脈の狭窄や閉塞は下肢の動脈に起きることが多いとされるため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度を数値化できます。

 

baPWV検査(上腕-足首間脈波伝播速度)は、心臓の拍動(脈波)が動脈を通じて手や足にまで届く速度を測定します。動脈壁が厚くなったり硬くなったりすると動脈壁の弾力性がなくなり脈波が伝わる速度が速くなります。腕と足の4箇所のセンサー間の距離と脈波の到達所要時間を計測し、計算式(両センサーの距離÷脈波の到達所要時間)にあてはめて得られた数値が高いほど動脈硬化が進行していることを意味します。

ABI、baPWV検査の所要時間はたったの「10分程度」

ベッドの上に仰向けの状態で両側の腕と足首に、血圧計の帯(カフ)、心電図の電極、心音マイクを装着します。ABIとbaPWVは同時に測定します。検査時間は10分程度です。

 

ABIの測定値が0.9以下の場合は、症状の有無にかかわらず動脈硬化が疑われます。下肢の比較的太い動脈が慢性的に閉塞し、足が冷たく感じたり、歩くとお尻や大腿の外側などが痛んだりと、「閉塞性動脈硬化症(ASO)」が進行すると、足先が壊死してしまうこともあります。

 

下肢血管エコー検査やMRI検査(下肢静脈MRV)を行い、血管の状態をさらに詳しく調べる必要があります。年齢によって異なりますが、baPWVの測定値が1400㎝/sec以上の場合は、動脈硬化が進行しており、くも膜下出血や、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの病気にかかりやすくなっていると言われています。

 

[図表4]baPWV検査

 

[図表5]baPWVとABI検査

 

 

 

梶川 博
医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長

 

森 惟明
医学博士

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