不動産オーナー(大家)ならば、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震など近年の大規模な地震被害などもあって、消防法が厳しくなってきたのはご承知のところだと思う。ひとつは、ビルやマンションの建築で5階建て以上のマンションには、避難通路を2方向に向けて設置、外部避難通路が新たに加わった[図表1]。そのため建築費用は上昇し、外部避難通路を増設することで部屋数が減ってしまうなど影響も出る。

エレベーター、10階建てで交換費用はなんと…

■EV設置とランニングコスト

 

月々のランニングコストについても説明しよう。大家やオーナーが負担するEV管理費はだいたい月2万5000円から3万円ほどで、プラス修繕費が必要になる。さらに年1回の建築確認申請や毎月の管理報告義務があり、大家にとっては難儀なことが多い。

 

エレベーター「なし物件」は、家賃がそのまま収入になるが、「ある物件」は部屋数が減るうえにEV管理費や修繕費の負担があるため収入は必然的に減る。年間で換算すると約120万円も違うと想定される。

 

120万円というと、1室分の年間家賃に相当する金額だ。仮に、1室空いた状態が続いても「ない物件」の方が利回りで優れているということだ。そうであれば4階建ての「なし物件」が断然いいといえる。

 

しかし、供給側の目線や立場に立てばエレベーターがあるメリットは多い。中古物件なら逆手に取って「エレベーターあり」の選択もあると思う。

 

■EVの総入れ替え

 

エレベーターの交換は、25年から30年が目安とされている。この仕事をして30年になるが、今、まさしくエレベーターの入れ替え時期を迎えている。そこで問題となっているのが老朽化による故障や部品の交換だ。

 

EVメーカーは営業的な戦略もあって、故障や修繕などで供給する部品が「もう無くなった」と話し、平気で入れ替えを提案してくる。

 

パソコンや家電製品などでも次々と新商品が生まれ、部品が無いので修理などのサービスが廃止するなど同じような現象が起きている。EVメーカーも部品供給の不足や欠品を理由に入れ替えを迫ってくるのが現状だ。

 

マンションやアパートを管理する側の対応では、あらかじめエレベーターの管理コストに修繕費や設備の入れ替え費を含めておくという選択肢もあるが、最近は地震時の自動停止装置の設置が義務付けられるなど、法律もどんどん変わってきている。

 

こうした背景もエレベーターを設置するうえでのデメリットのひとつと私は考えている。エレベーターの交換費用は10階建てエレベーターで約900万円とされる。エレベーターがある物件を買うと、数十年後に多額の費用が必要となることや利益率が減るということは心に留めておく必要がある。

 

■落とし穴に落ちないために

 

私も落とし穴に落ちた。所有する物件のひとつに、1991年の物件でエレベーターが付いたアパートがある。修理を繰り返していたところ、最近になってメーカーが、もう部品がないと言ってきた。

 

で、どうすればいいかと尋ねたら、カゴからセンサー、コンピューターまで全て入れ替えないといけないと言われ、そこでけっこう費用が掛かっている。

 

中古物件を購入してエレベーターが付いた物件を持っている人がいれば、管理だけじゃなく修繕などを含めたフル管理の契約があるので、通常の管理は月2〜3万円、フル管理だと倍の5万円ぐらいになり毎月の負担は大きいが、十数年先を見込んで入っておくことをお薦めする。

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    本記事は2019年9月刊行の書籍『大家業は寝ててもチャリンチャリン 工務店社長が教える4つの核心』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。最新の情報・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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    桃田 健史

    幻冬舎メディアコンサルティング

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