日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は「公的年金制度の実情」について焦点をあてていきます。

「年金積立金」は公的年金の原資であらず

いま、現役世代だという人は、将来的にその時の現役世代の手取りの半分くらいは年金がもらえそうだ、ということがなんとなく見えてきたでしょう。しかし少子化で保険料収入が減少しているなか、給付水準をどのように維持するのだろうか、という疑問も。

 

年金給付の財源は、税金と「年金積立金」を活用することでバランスを取る想定になっています。この年金積立金は、これまでに払い込まれた保険料のうち、年金の支払いに充てられた後、さらに余った分。高齢化が今よりも進んでいなかった時代の貯金、といったものです。

 

厚生労働省『公的年金財政状況報告平成30年度の概要』によると、時価ベースの年度末積立金は前年比2.6兆円増の200.7兆円。年金支給額の約5年分にもなっています。これは他の先進国と比べても多く、米国は3年程度、ドイツに至っては数ヵ月程度といった状況。

 

そしてこの積立金の多くを運用しているのが「年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)」。それによると、2001年度以降の累積収益は、収益率3.37%(年率)、収益額85.3兆円(累積)と、なかなかの運用実績です。

 

この積立金を年金給付の原資と勘違いしている人は多く、また運用益がマイナスになったときにだけ大きく報道されるため、将来の年金不安が広がる、といった現象が起きています。仮に積立金がゼロになったとしても、年金制度がすぐに破綻するというわけではありません。年金制度を正しく理解していれば、将来のもらえる年金額は……などと過度な心配はしなくてもいいと言えるでしょう(きちんと保険料を払っていればの話ですが)。

 

とはいえ、年金だけで老後の生活が成り立つわけではありません。厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生労働省「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」で給付状況をみていくと、厚生年金保険(第1号) 受給者は3,530万人で、受給者一人当たりの平均年金は月額約14万6,000円。月額平均年金給付額を都道府県別にみていくと、最も多いのが「神奈川県」で16万6546円、最も少ないのが「青森県」で12万2081円。

 

さらに総務省『2019年度家計調査』を見ていくと、高齢者世帯の「実収入」は、世帯主が無職の場合、月額24万5374円。そのうち「公的年金」は20万2746円。そして「黒字額」は-2万8472円。1年で35万円、10年350万円、20年で700万円近い赤字になる計算。生活費だけ考えれば、その分だけ最低でも貯蓄を切り崩し、やり繰りする必要があります。

 

あくまでも平均的な世帯の話なので、家庭によって状況はさまざま。年金だけで生活できるという家庭もあれば、1億円近い貯蓄が必要などという家庭もあるでしょう。ただ世間で言われている年金不安の多くは、考え過ぎであり、それぞれの状況に応じて資産形成を進めていくことが重要です。

 

 

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