ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

車いす、介護ベッド、ポータブルトイレの購入は必要か

身体状態が変化するなら福祉用具貸与(レンタル)を

 

今、私が母のためにレンタルしているのは、車いす、車いすの付属品(座位シート)、特殊寝台(介護ベッド)とその付属品、床ずれ防止マットで1か月の料金は3200円くらいです。購入すると高価なものはレンタルを考えますが、車いすは長く利用しているため、今となっては購入の方がトータルで安かったかもしれません。ただ、母の身体状態に合わせて幅や軽さ、リクライニングの有無など、4回ほど機種変更をしています。

 

介護ベッドを利用してからは、フットレストの開閉が可能なものに変えたら介助が楽になりました。一時期、頭を後ろに反らすようになったので母が楽なようにとリクライニング車いすに変えてみました。ですが、私が重すぎて動作が負担になり数日で元に戻したこともあります。車いすは状態によって幾度か交換することがあるので、購入よりもレンタルが良いと思います。

 

 

 

介護ベッドは、上下・頭足の高さ調整ができるタイプがお薦め

 

介護ベッドは、布団から車いすへの移乗が困難になり導入しました。選ぶポイントですが、床板の高さが調整でき、下に空間があるものが車いすへの移乗とオムツ替えに便利です。また、背部と脚部、両方の傾斜角度を調整できるとベッド上の移動や座位の保持が楽になります。

 

マットレスは少なくとも幅97〜100センチ、長さ195センチ以上が良く、膝を立ててオムツ介助をしても幅があるので落下の心配も少なく安心です。マットの硬さは沈まない硬さにすると母本人も寝返りがしやすくなります。ベッドとマットレスは対で契約することが多いです。高価な上、マットレスは失禁による汚染時も交換をしてくれるためレンタルが良いと思います。

 

特定福祉用具の購入は時期を見極める

 

ポータブルトイレ、特殊尿器やシャワーチェアなど肌に直接触れるものは、福祉用具の購入に介護保険が使えます。必要だからと慌てて先に買ってしまうと後から精算ができません。この購入に対する補助は要支援から利用でき、認定は申請から1か月くらいかかります。すぐにほしい場合は地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。

 

インターネット通販でも安価に福祉用具を買えますが介護保険を使った方が安く済ませられる場合もあります。年間10万円(消費税込み)を限度に1~3割が自己負担となります。歩行器や杖などを使えばトイレまで行けるのに、安易にポータブルトイレを購入すると自立歩行の機会を失ってしまいます。何でも便利だからと手配する前にもう一度状況を考えてみると良いかもしれません。

 

厚生労働省ウェブサイトhttps://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group21.html
厚生労働省ウェブサイトhttps://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group21.html

 

利用するまでの流れ

 

地域包括支援センターや担当のケアマネージャーに困っている状況を伝え、福祉用具をレンタルもしくは購入したいと伝えてください。サービス提供事業所の紹介を受け、内容や利用頻度を話し合います。ケアプラン完成後、契約をして利用開始となります。介護保険給付の対象となるのは、都道府県から指定を受けた事業所です。購入先が限られていることを知っておいてください。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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