「うちの子だけ見てほしい」が偽りの個別指導を生む
今は、予備校も、親のサイドも含めて、個別学習がブーム化しています。しかし、これにも問題があると私は思っています。一番の問題は、小中学生向けの塾から個別学習が増えているという点です。小中学生というのは、人生の中でも最も多感な時期です。
模擬社会とでも言える多人数の中で、競争心や逆に協調性など、人間として大事なスキルを磨いていかなくてはいけない時期です。そういう時期に、いわば目先の利益を追おうとしているのが昨今の親なのかもしれません。つまり、「うちの子だけは特別に」という考えです。
ところが、それが間違いです。
大勢が一緒になって勉強して、協調性を学びながらも、「あいつには負けないぞ」という競争心も身につけていくことが大事なのです。他人を見ながら成長していく。見栄もモチベーションになります。他人(ひと)とのふり見て我がふり直すわけです。
それが小さなころから個別学習に慣れてしまうと、点数と先生に向き合うだけで、成長しても集団に馴染まなくなってしまいます。自分だけの世界を築いてしまうからです。
他人に対する優しさは否定され、気遣いも否定され、わがままになり、自分だけ良ければよくなります。精神的に何かしら欠落した人間に育つ可能性が高いのです。何でも先生に頼る性格になってしまう子もいます。
私はこうした傾向は危険だと思います。精神的にゆがんだ子供たちを大量生産してしまう可能性が高いと考えています。集団生活を嫌う子供たちは、社会を拒否する子供たちなのです。そもそも子供たちが、そうした環境を求めているわけではありません。
それは、親の間違った願望、あるいは、個別に見てもらったほうが成長が早いという誤解です。ほとんどが親の自己満足と言っていいでしょう。もっと自分の子供たちを信じてほしいのです。
さて、予備校や塾の側が個別学習に力を入れるのは、そのほうが儲かるからという側面もあります。個別学習は単価を高くできますし、それでいて講師の質を上げるわけではない。利幅が大きくなるのです。
講師の質が高くなければ、いくら個別学習を受けても、効果のほどは望み薄です。質が良く気に入っている講師の個別学習をしっかりと探すことです。おや?と思ったら、別の予備校で体験することです。セカンドオピニオンをすべきです。
長澤 潔志
医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役
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