調査官は重加算税をかけたがる
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英国21年度予算案:新型コロナウイルス対応策の延長と、相応の負担を表明
英国のスナク財務相は2021年3月3日、21年度の予算案を発表し、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済を支援する目的で講じた緊急減税措置の延長などを明らかにしました。
一方で新型コロナウイルス対策に活用した巨額の経済支援費用を調達するため、黒字企業には負担を求めることになることを示唆しています。
どこに注目すべきか:英国21年度予算案、法人税、持続可能性
英国の21年度予算案の発表を受け、3日の欧州債券市場では英国10年国債など長期国債を中心に利回りの上昇(価格は下落)が見られました(図表参照)。英国の21年度予算案では新型コロナウイルスへの対応策として導入された政策の延長が盛り込まれていました。ワクチン接種が進む英国ですが支援策の必要性が示されると同時に、支援策への負担も今後の課題となりそうです。
21年度予算案に示された主な新型コロナウイルス対応策としては、休業を余儀なくされる従業員の給与を8割補填する制度を今年9月末まで延長する雇用維持制度や、自営業者への所得支援が含まれます。
宿泊や飲食などを対象とした付加価値税の引き下げも、9月末まで延長する模様です。日本のGotoトラベルを一時的にそこにかかる消費税を引き下げで提供するイメージの制度とも言えそうです。英国は3度目のロックダウン(都市封鎖)を続けています。欧州の中で、ワクチン接種では先行していますが、経済への影響は大きいままです。
新型コロナウイルスへの対応策拡大に伴い、英国の財政事情は悪化しており、国際通貨基金(IMF)の予想では英国の財政赤字対GDP(国内総生産)比率は20年が19.9%と先進国平均の14.4%を大幅に上回ると見込まれています。また、債務残高対GDP比率は20年に100%を上回り、25年までの予想でも100%を上回ると予想されています。
このような財政状況の中での歳出拡大が国債利回り上昇の要因の一つと思われます。
なお、英国の21年度予算の発表で、注目したいポイントがあります。それは(将来的に)債務の負担を黒字企業にも求めたことです。具体的には、23年からの予定ですが法人税を19%から25%に引き上げるとしています(実際には利益の規模に応じて税率は調整される)。スナク財務相は議会で英国政府は企業に新型コロナ対策として1000億ポンドを超える支援を提供したのだから、企業側にも景気回復への貢献を求めると説明しています。
英株式市場は、支援策の延長を好感して上昇しましたが、法人税率引き上げに対して下落する局面もありました。もっとも、引き上げるとしても23年度からであり、そもそも英国の法人税率が低いことから、3日の英株式市場は結局上昇しています。目先の対応策延期への安心感が好感された模様です。
英国も目先は財政政策の拡大を優先させてはいますが、負担の公平性などを含め、財政政策の出口戦略への展開も頭の片隅に入れるべき時期にさしかかっているようです。
ついでながら、長期的な方針として、スナク財務相は英議会での演説で、イングランド銀行(中央銀行)の政策運営上の役割に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」への移行を追加することを表明しました。
スナク財務相は英中銀の政策として物価目標を維持するのは当然として、環境の持続可能性の重要性も政策に反映するべきと述べています。これには英中銀も英政府の脱炭素に向けた戦略における役割を歓迎すると表明しています。英中銀は早速、社債購入で企業の環境への取り組みを考慮する考えを示しています。どうやら長期的な方針などと悠長に構えてはいられないようです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英国財務相が投げかけたコロナ対応の負担』を参照)。
(2021年3月4日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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