
リモートワークがすっかりと普及した昨今。出社か自宅勤務のどちらが適しているかは人それぞれですが、自宅勤務派からは「満員電車から解放されて楽」「いっそう集中できる」など、仕事がやりやすくなったという声が聞かれます。ところが最近「テレワークによる目のトラブル」を訴える患者が急増しているようです。年間2000件もの眼科手術を行うスゴ腕ドクター・佐藤香氏が対処法を解説します。
テレワークで急増した「目のトラブル」TOP3
こんにちは。アイケアクリニック院長、眼科医の佐藤香です。新型コロナウイルスが流行して以来、働き方や仕事に対する考え方が変化してきましたね。テレワークなど、それまではなかった勤務スタイルが定着しましたが、皆さんのお仕事はいかがでしょうか。
こうした変化に伴い、最近「テレワークによる目のトラブル」を訴える患者さんが増えました。それも2倍近くです。
なかでも「ドライアイ」「眼精疲労」「視力低下」がトップ3のお悩みです。
当院を受診される人以外にも、きっと同じ症状に悩む人が多いのではないでしょうか。そこで今回は、これらの「テレワークが引き起こす目のトラブル3つ」について、原因と解決方法についてお話したいと思います。

「集中しすぎた結果…」ドライアイの意外な原因
まずはそれぞれのトラブルについて、症状が現れる仕組みや原因を見ていきましょう。
最初はドライアイについてです。テレワークだと、PC画面をじっと見つめながら長時間作業に没頭してしまいますよね。集中するとまばたきが減ってしまいます。すると目が乾燥してしまい、ゴロゴロしたり重い感じがしたりなど、ドライアイを発症してしまいます。
重症化すると目に傷ができてしまい、目が開けられなくなることもあります。
特に今は寒い時期ですので、エアコンを使うことが多いのではないでしょうか。自宅でのテレワーク環境が整っておらず、エアコンの風が直接目に当たってしまう場所でPC作業を行うと、ドライアイになりかねません。
患者さんが急増していることからも、やはり実際にほとんどの方が感じているトラブルの1つと言えますので、ご注意ください。
ドライアイの次に待ち受ける「眼精疲労」
次は眼精疲労についてです。ドライアイの症状が続くと、目が疲れたり重くなったりなどの、いわゆる「疲れ目」の症状が現れます。
また、PC画面や書類などの「近く」を見ることが多い場合も要注意です。モノを見るときには、ピントを合わせるために「毛様体(もうようたい)」という筋肉を使います。
近くを見続けるというのは、毛様体がずっと緊張した状態になる、ということなんですね。
筋肉がずっと緊張している状態というのは、全身で例えると、ずっと走り続けている状態と同じです。こう聞くと、確かに疲れ目になってしまうな、とわかりますよね。
近くを見続けることで毛様体が疲れてしまい、眼精疲労の症状が現れたり、ピントが合わなくなったりして、見えにくくなります。
そのため、やはり目を休める時間が必要です。シンプルな方法ではありますが、目の疲れがリセットされることはもちろん、再開後は仕事の効率も上がりますから、休憩時間を大切にしましょう。
「目の筋肉疲労」が招く視力低下
3つ目は視力低下についてです。狭い室内でPC画面ばかりを見続けるような生活を送ると、目の筋肉が緊張した状態が続きます。そうすると、疲れ目の症状が現れると同時に、目のピントが近くに合ったままの状態となり、遠くが見えにくくなってしまいます。
ふとPCから目を離して、部屋の奥にかけてある時計を確認しようと思ったけれど、ボヤけてよく見えなかった…というような経験はありませんか? これは筋肉の緊張がほぐれないために、急に遠くを見ようと思ってもうまくピントを合わせられない状態なのです。
緊張状態が定着してしまうと、仕事以外の普段の生活においても遠くのものが見えなくなってしまい、結果として視力が下がることがあります。
最近は特に「会社の健康診断を受けたら、去年より視力が下がっていて…」という人が結構多くいて、やはりテレワークの影響が出ているのではないかと考えられます。