日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は後妻と前妻の子どもによる遺産分割の事例を、山田典正税理士が解説します。

解説:遺言さえ残しておけば…だけでは解決しない

お金よりも気持ちの面でのトラブルと言えますが、まずは専門家である税理士としてコメントをします。B子さんの立場であれば、お父様が遺言を残しておけばAさんが主張できるのは遺留分のみとなります。

 

遺留分は相続分の2分の1ですので、Aさんが主張できる遺留分は4分の1となります。たとえば、自宅の家と土地のうちお父様の持ち分相当の価値が2000万円だとすると、現預金と合わせた相続財産は合計で5000万円になりますので、Aさんが主張できる遺留分はその4分の1である1250万円となります。

 

さらに2020年7月より民法改正により遺留分の請求権は「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に変更がされました。これにより遺留分として請求できるものは金銭債権に限定がされましたので、遺言で自宅をB子さんに相続させる、と遺しておけばAさんは自宅に対する財産権を主張することはできません。これで現預金の2分の1はAさんに残すと遺言を残していれば、1500万円の相続財産に対して、Aさんが主張できる遺留分は1250万円ですので、結果として主張をすることは出来なくなります。

 

ただ、このような遺言をただ残しておけば良いか言うと、もちろん法律的にはまったく問題はないのですが、Aさんの心が満たされることは決してなく、むしろ気持ちを逆なですることになり兼ねません。今となってはお父様がAさんに対してどのような気持ちを持っていたのかは解りかねますが、やはり遺言に付言事項としてAさんに対する想いは残しておくべきでしょう。

 

さらにこれも決して得策とは解りませんが、自宅の財産権はあえてAさんに残したうえで、B子さんに対しては配偶者居住権を設定するということも遺言で可能です。この配偶者居住権も2020年の民法改正により同年4月より設定が可能となりました。

 

配偶者居住権とはその名の通り、配偶者が自宅に住み続ける権利のことを指しますが、期間についても設定が可能であるなど、柔軟な対応が可能です。本件であれば、終身という形でB子さんが亡くなるまでの居住権を設定したうえで、財産としての権利はAさんに残すとします。ただし、自宅の一部の権利は既にB子さんが持っているようですから、B子さんについても遺言を残してもらわないとAさんの権利とはなりません。このような内容を遺言の付言事項として残しておいて、B子さんとAさんの仲を取り持つ、ということが場合によっては遺言により可能となります。

 

ただ、実際のところはAさんからしたら「そんな家はいらないし、関わりたくもない」という気持ちもあるでしょうから、これが得策かはわかりません。

 

亡くなられた方にアドバイスをするのも気は引けますが、生前にお父様はちゃんとAさんと向き合ってコミュニケーションを取っていれば、場合によってはAさんとB子さんが友好な関係性を築くことができた可能性も残されていたでしょう。B子さんの老後も心配でしょうから、Aさんに家を残す代わりにB子さんの面倒を見てあげてほしい、ということもあり得たのではないでしょうか。

 

そのようなドラマのような展開は中々起こりえないかもしれませんが、亡くなってしまっては向き合うこともできませんから、Aさんのためにも生前にちゃんと向き合っていくべきだったのかもしれない、と思ってしまいます。

 

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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