日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は後妻と前妻の子どもによる遺産分割の事例を、山田典正税理士が解説します。

後妻と初対面…キレイな身なりに沸々と怒りが

Aさんは葬儀が落ち着いた頃を見計らって、B子さんに電話をします。相談があるから週末に自宅へ伺いたいと話せば、戸惑いつつも承諾してくれたそうです。

 

はじめて足を踏み入れる“父の家”には不思議なほど現実感がなかったといいます。

 

Aさん「初めまして。この度はご愁傷さまでした。一応葬儀にも行ったんですが、ご挨拶もなく失礼しました」

 

B子さん「そんな……あ、お茶出しますね」

 

Aさん「いえ、お構いなく。相続のお話をしたらすぐ帰りますから」

 

軽く見ただけでも、B子さんが余裕のある暮らしをしていることは見て取れました。亡くなった母とは違う、張りのある肌や、手入れされた爪。調度品はどれも高級そうで、自分たちの生活との落差に愕然としたといいます。あくまで冷静に話し合いを進めようとしていたAさんでしたが、自然と語気が強くなっていきました。

 

Aさん「父とは会った記憶もありませんが、僕には血の繋がりがあるので……父の遺産を相続する権利があります。そうですよね?」

 

B子さん「はい、相続人は私とAさんの2人です。夫名義の貯金が3,000万円ありますから、その半分は……」

 

Aさん「……この家は?」

 

B子さん「え?」

 

Aさん「この家は、誰の名義ですか?」

 

B子さん「私と夫の共同名義です」

 

Aさん「それでは、この家の父の権利分についても、僕は半分相続する権利があるということですよね?」

 

Aさんの突然の発言に、B子さんは顔を真っ赤にしていいました。

 

B子さん「それはそうですが、ちょっと待ってください! そうしたら、この家を売らないといけません。私はどこに住めばいいんですか!?」

 

Aさん「年金と相続分で十分暮らしていけますよね? 衣食住に不自由することはないと思いますが」

 

Aさんがつとめて淡々と言葉を続けると、B子さんは思わずといった様子で声を荒げました。

 

B子さん「貯金はすべてあなたに譲りますから、この家だけは、私に相続させてください!」

 

Aさん「この家にこだわる必要がありますか? むしろ、バリアフリーのマンションなどに入居した方が使い勝手もいいのでは。ここは段差も多くて、高齢者の一人暮らしには不便だと思いますよ」

 

B子さん「こ、この家は、夫との想い出がつまった大切な……」

 

そこまでB子さんが話すと、Aさんの表情が一気に険しくなります。堪忍袋の緒が切れたといった風に音を立てて机に手をつきました。

 

Aさん「父と不倫して俺ら家族をめちゃくちゃにしたのに、よく想い出だなんて言えますね! 自分で図々しいとは思わないんですか!」

 

このように言うと、B子さんはうなだれたまま話さなくなったといいます。Aさんも「言いたいことは言えてすっきりしました」と晴れ晴れとした様子。その後の遺産分割は、貯金の1/2だけを分割し終えたといいます。

 

「これで十分。面倒くさいことも嫌ですしね」

次ページ解説:税金面だけで遺産分割を考えてみると…

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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