妹を見捨てた妹家族に「実家の財産」を渡したくない

不幸な事故のせいで意識が戻らない妹、そんな妹を見捨てようとする妹の家族。幸い、姉妹には資産家の父親がいますが、妹を守るために父親の財産を多く相続させれば、ゆくゆくは冷酷な妹家族に実家の財産がわたることになり、妹思いの姉はジレンマに陥ります。解決方法はあるのでしょうか? 不動産・相続問題に強い山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

目を覚まさない妹と、老父の財産

「先生、意識不明の妹に、相続放棄させたいのです」

 

「それは…。一体どんなご事情がおありでしょうか?」

 

彩子さんは泣きながら、妹の置かれた状況と自分の心のうちを弁護士に訴えました。

 

「なるほど…。それはおつらいですね」

 

弁護士は彩子さんをいたわるように言葉をかけました。

 

「妹は私が一生守ります。私たちの父親には十分な財産がありますし、妹の治療費についてはなにも問題ありません。私だって本当は、自分に万一のことがあった場合を考えて妹に財産を多く持たせておきたいのです。でも、もし妹になにかあれば、財産は妹を見捨てた子どもたちにわたってしまう…」

 

「なるほど。お気持ちはわかりました。しかし、妹さんは意思疎通ができる状態ではないため、相続放棄をしてもらうことはできません。このような状況で相続が発生した場合は、妹さんに成年後見人がついて、妹さんの権利と財産が守られるように相続手続を進めることになります。相続放棄は妹さんの利益を損なうことになりますから、一般的には、後見人が相続放棄を行うことは難しいでしょう」

 

「では、いずれはあの子どもたちにも財産が行ってしまうのでしょうか?」

 

「それを防ぐには、お父様に遺言書を書いていただくほかありません。失礼ですが、お父様に、深刻な病気や認知症の兆候はないでしょうか?」

 

「数年前に母を亡くしてから一気に年を取りましたが、まだそこまでは…」

 

「では、一刻も早く公正証書遺言を作成いただきましょう。お父さまが意思の疎通が図れない状態になったり、亡くなったりすると、彩子さんのお考えを実現することはできません」

 

「…わかりました」

 

彩子さんは弁護士にアドバイスされたとおり、公証人役場に向かいました。

公正証書遺言はもちろん、家族信託の検討も視野に

彩子さんの妹さんの子どもたちに、父親の財産が多く渡らないようにするためには、父親に公正証書遺言を作成してもらうことが重要です。

 

ただし、法定相続人には「遺留分」といって、相続人の生活を保障するための最低限の財産が相続できる権利が保障されており、法定相続分の半分がそれに該当します。今回の事例では、相続人は彩子さんと美紀さんの2人であるため、基本は父親の資産を半分ずつ相続することになりますが、妹さんの相続分を最低限にするには、遺言書の内容について相続分を1/4にとどめたものにする必要があるでしょう。

 

場合によっては、彩子さんの父親と彩子さんの配偶者を養子縁組して相続人を増やし、美紀さんの相続割合を減らす方法もあります。しかし、万一人間関係が破綻したりすると、問題が複雑化する可能性があるため、先々までを見据えたうえでの慎重な検討が求められます。

 

今回は、突発的な事故によるものなので、事前の対策を打つのは難しい事案でしたが、一般的に判断能力を喪失する認知症等の対策には、任意後見契約や家族信託制度の利用も考えられるところです。

 

どのように妹さんの生活を守るかは、今後を考えてよく計画を立てなければなりません。

 

(※登場人物の名前は仮名です。守秘義務の関係上、実際の事例から変更している部分があります。)

 

 

山村法律事務所

代表弁護士 山村暢彦

 

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弁護士法人 山村法律事務所

 代表弁護士

実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。

数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。

クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。

現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。

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