日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「教育のIT化と教育格差」。コロナ禍で児童生徒に学習用PCを1人1台、と言われていますが、そのような教育現場で何が起きているのでしょうか。

「親の経済力」が教育格差を拡大させる

コロナ禍でIT化の推進に勢いがついた教育現場ですが、格差を最も感じていたのは学生だったのかもしれません。前出の『大学等における後期等の授業の実施状況に関する調査』では、対面授業の実施割合が半分未満という187校のうち、「ほぼすべての学生が、授業の形態等について理解・納得している」と回答したのが18校、「大多数の学生が、授業の形態等について理解・納得している」と回答したのが140校でした。残りの学校の状況は分かりませんが、「ほぼすべて」「大多数」という文言から、納得のできない、できていない学生が少なからずいる、という状況が見えてきます。

 

また公益財団法人日本財団が行った『18歳意識調査/第33回テーマ「教育格差」』によると、「他の人に比べて学習環境に差があると感じている」は43.4%。その理由として、「集中して勉強できる環境が家庭になかった」が32.0%、「経済的理由で塾や習いごとにいけなかった」が22.6%、「身近に勉強を教えてくれる人がいなかった」が21.9%と続きます。さらに「オンライン授業が未導入」が15.0%、「家庭や学校のデジタル環境の整備に差があった」が12.0%など、学習環境が公平ではない実情が見えてきます。

 

さらに「コロナ禍における学習意欲」を尋ねると、「変わらない」が60.9%と、上手にリモート授業に対応する学生の姿が見えてくる一方、「下がった」が29.8%と、新しい学習スタイルに対応できず、モチベーションが下がっている学生が3割近くもいます。

 

そして「教育格差を感じる」と回答したのが、半数近い48.9%。さらに学習環境の差を感じている層に限っては、71.4%が「教育格差を感じる」と回答しています。そしてその理由として最多だったのが「家庭の経済力」で、25.3%でした。

 

厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』によると、会社員(男性、大学・大学院卒)の月給は50代前半でピークに達しますが、大企業と中小企業の間には10万円近い差が生じています。親がどのような企業に勤めているかで、経済力に大きな差が生じます。

 

【会社員の月給 大企業と中企業の比較】

30~34歳 大企業34万8800円、中企業30万1900円
35~39歳 大企業41万3600円、中企業35万900円
40~44歳 大企業47万1600円、中企業40万2400円
45~49歳 大企業53万600円、中企業44万3600円
50~54歳 大企業58万5400円、中企業49万5500円
55~59歳 大企業57万1200円、中企業50万600円
60~64歳 大企業40万300円、中企業39万2300円

 

また厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』で職種ごとの平均年収を見ていくと、「航空操縦士」「医師」「大学教授」は1000万円超え(図表1)。職種によって年収格差は1000万円以上にもなります(関連記事:『129職種「年収」ランキング』)。

 

出所:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」より作成
[図表1]職種別「平均年収」上位10 出所:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」より作成

 

さらに総務省『家計調査年報』(2019)によると、都道府県別の教育費のトップは「東京都」で全国平均の1.8倍の33,645円。一方で教育費が最も少ない「宮崎県」は、全国平均の1/2以下となる7,840円。地域によって4.2倍の格差が生じています(関連記事:『都道府県別「教育費ランキング」ベスト10…9位の意外な県は?』)。

 

出所:総務省『家計調査年報』(2019)より作成
[図表2]都道府県別「教育費」上位10 出所:総務省『家計調査年報』(2019)より作成

 

結局はお金があれば、教育の機会に恵まれるということが言えるでしょう。そしてその現実を、学生は理解している、ということです。このコロナ禍で推進される教育のIT化が、格差の是正につながるよう、願うばかりです。

 

 

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