こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

寛容の精神がソーシャル・イノベーションを促進

一方、宗教の中には、人と人との違いを奨励する宗教もあります。しかし、仏教ではすべての生物の平等を語っていますし、道教の観点から見れば「人の数だけ神がいる」ということになります。これらは比較的インクルーシブな宗教と言えるでしょう。というのは、「私の信じる宗教の神とあなたの信じる神のどちらか一方しか選べない」というような状況にはならないからです。

 

実際、道教の後期には、どんな神も道教の中に入ってくることができるようになりました。つまり、既存のどんな宗教も道教を否定することなく、道教と相互に共存することができるのです。民間の宗教を信仰する友人の中に、ローマ法王と議論する目的でバチカンに行った人がいますが、ローマ法王が一神教の信仰しか認めないという頑なな態度であれば、議論は難しいでしょう。

 

台湾にはインクルージョンあるいは寛容の精神があります。だからこそ、精神や信仰といった面においても、人々と協調し、発展することができるのです。また、自分とは異なる神を信仰している人を敵とみなすこともありません。他の宗教の神について知らないだけかもしれませんが、そうした別の信仰についても「知ろう」と思う態度を持つことが、よりインクルーシブな社会へと進むカギになるのではないでしょうか。

 

これは日本人の考え方にも似ているように思います。日本人は一つの物、場所、概念、果ては言葉にまで、「神が宿る」という考えを持っていたはずです。道教で信仰の対象となるのは、人間が多い(関羽や月下老人など)のですが、台湾の民間信仰では、日本と共通した部分が非常に多くなります。それこそ一つの石に願掛けをして、願いが叶えばその石を神様として崇めるというようなこともあります。

 

こうした点で、日本と台湾は似ているように思います。「人間として優れているから、神として奉られる」のではなく、「どんな物であっても、人間の心を感動させたり、何かを感じさせたりすれば、それで精霊が宿る」という考えです。

 

こうした考えは、インクルージョンあるいは寛容の精神によって支えられています。それがあることによって、ソーシャル・イノベーションがより進みやすくなるということも言えると思うのです。

 

 

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン

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