術後リハビリ中の母親と認知症の父親が、再び一つ屋根の下に戻ってきましたが、今度は父親が倒れ、危篤状態になってしまいます。しかし、あれほど父に尽くしてきた母親は「お父さんのことは、もう終わったからいいの」と…。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

はた目には「仲のいい夫婦」に見えていたが…

私の父は、どちらかというと亭主関白であり、母はそんな夫に従う従順な妻というイメージでした。もちろん、ときには夫婦喧嘩もしていましたが、それでも最後は父の言うことに従って、「我」は隠してしまうのです。

 

母が一歩引くことで、はた目には仲のいい夫婦に見えていたのではないでしょうか。

 

その意味で、父もそうでしたが母もまた「昭和の日本人」ふうなのです。

 

自分のことは脇に置いても誰かのために生きていく。父が元気なときは父のため、子どもが生まれてからはそこに子どもが加わります。自分のことは二の次にして、他者を立てて生きていく。そんな人だったのです。

 

そんな母が、父の入院後はまったく父に対して振り向くことをしなくなりました。

 

自分の身体の調子が悪かったこともあったのでしょうけれど、見舞いにも一度も行きませんでしたし、家で父の具合が話題に出ることも少なかったのです。

 

「お父さんのこと気にならないの?」と聞いたことがあります。そのとき、母は「お父さんのことは、もう終わったからいいの」と答えました。

 

「え、終わった?」

 

「いままで、いっぱい尽くしてきたから、もういいの。あとは自分のことだけを考えて生きていくの」

 

そのためには、できるだけ家にいたい、入院したくない、そういうことだったようです。

 

これまでは、他人のために生きる、自分のことはかまわないでほしいというような性格だったために、私も多少は驚きましたが、ただ、そう話したからといって、母が「自分のことだけを考えて」生きたのかどうかは分かりません。

 

むしろ、やはり「昭和の日本人」でしかなかったのかなと、随分とあとになって気づかされることになるのです。
 


佐野 徹明

医療法人さの内科医院院長

 

 

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48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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