長年経過観察を続けてきた、筆者の母親の頚髄腫瘍に悪化の兆しが見え、手術をするため3ヵ月の入院生活となりました。その間、クリニックの勤務の傍ら、自宅にひとり残る認知症の父を介護しなければなりません。しかしそこには、これまでになく濃密な父と子の時間がありました。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

頚髄腫瘍を患う母に「胃がん」の疑いが…

2011年、母の状態がさらに悪くなってきました。

 

12月にCT検査を受けた際、胃壁の顕著な肥厚化が見られました。胃壁がまるでキャッチャーミットのように厚くなっていたのです。胃がんが疑われたので、2012年4月に胃カメラやPET検査を受けることになりました。

 

母はそれほど心配しているようには見えませんでした。もともと我慢強い人で、かつては家事をこなしながら開業医である父の仕事を毎日手伝ってきたのです。

 

受付や薬局などで患者さんの相手をするのですが、かなり忙しい状態で何十年かを過ごしてきました。

 

そのあいだ、さすがに身体がしんどくなった時期に、父に対して「誰か人を雇って、私のほうは手伝いを辞めさせてほしい」と頼んでいたようです。激しいやり取りをしているのも見たことがありますが、結局は母が折れて、同じように父の手伝いをして、家事も行う暮らしに戻っていったのです。

 

そうした生活が変化したのが、2000年に頸髄腫瘍が見つかったときでした。このときに父の仕事の手伝いを辞めて、家事だけに専念するようになったのです。

 

精神的に、とても楽になったのではないでしょうか。

 

手術をせずに通院だけで、そのあとの十年間を無事に生活してこられたのですから、やはり過労がその一因だったかもしれません。ですから、つい、父がもっと早くに辞めさせてあげていれば、と思ってしまうのです。

 

病院で胃がんの検査をしましたが、異常は見つかりませんでした。一安心したのですが、あとになって考えると、当然、このときに胃の「がん化」は始まっていたはずです。

 

検査では見つけることができない種類のがん、いわゆる「スキルスがん」(病巣が表面に表れずに胃壁のなかに潜り込むタイプ)だったためでしょう。これに気づけなかったことも、またあとになって悔やまれることでした。

 

胃がんの徴候はないと思っていましたので、夏ごろから痩せてきた際も夏バテによるものかと思い、私が自宅で毎日点滴を行いました。

 

そして、秋になると尿漏れや便の失禁が見られるようになります。歩いていて転倒することも増えたため、以前から抱えていた頸髄腫瘍の悪化を疑い出したのです。

 

10年以上も手術をせず治療してきましたが、腫瘍が大きくなっているのであれば摘出しなくてはなりません。

 

病院で検査を受けたところ、やはり腫瘍は大きくなっているようでした。それが歩行を困難にするなど、さまざまな症状を引き起こしていたのです。

 

いよいよ腫瘍の摘出手術をしなくてはならないと判断されました。

 

摘出手術は翌年、2013年1月に大阪市立大学医学部附属病院にて行われました。

 

どれだけ体力があるか心配でしたが、なんとか手術も無事に終わり、腫瘍は摘出できたのです。

 

2月にはリハビリ病院に転院、4月まで院内においてリハビリを行ってから家に帰ってきました。

 

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    佐野 徹明

    幻冬舎メディアコンサルティング

    開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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