相続における「遺言書の重要性」を理解している人は、決して多くありません。親は自分の死後、まさか子どもたちが熾烈な相続争いを繰り広げるなど、想像してもいないのでしょう。しかし、遺言書がなければ、そのリスクは一気に跳ね上がります。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が、事例をもとに解説します。

遺言書がなければ「遺産分割協議」が必要になる

Aさんの母親が遺言書を残していないとなると、Aさんは兄と「遺産分割協議」をする必要があります。

 

遺産分割協議とは、相続人全員で行う、亡くなった方の遺産を分けるための話し合いのことです。相続人だけで話し合うのはもちろん、それぞれが弁護士をつけて話をすることもできます。

 

弁護士:「お母様の遺産には、どのようなものがありますか?」

Aさん:「約3,000万円の預金です」

弁護士:「遺言書がないなら、その遺産について、お兄様と遺産分割協議をしなければなりませんね」

Aさん:「〈遺産分割協議〉とはどのようなものですか? 絶対に行う必要があるのでしょうか?」

 

銀行等の金融機関は、亡くなった方の口座を凍結し、遺産となる預金が勝手に引き出されないようにします。この凍結を解いて預金を取り出すには、相続人で遺産分割協議を行い、だれが相続するのかを明確にする必要があるのです。

 

また、亡くなった方の名義の不動産がある場合、名義変更をするため、やはり遺産分割協議を行って、だれが相続するのかを明確にしなければなりません。その他、株式投資をしていた場合も、車を保有していた場合も同様に、遺産分割協議を行わなければ、原則として解約や名義変更ができないことになっています。

 

しかし、遺産分割協議は簡単に終了するとは限りません。揉める理由はさまざまですが、いくら幼少期に仲がよかったきょうだいでも、大人になれば事情が変わります。結婚して家族ができれば、住宅ローンや教育費など、お金の心配は増えるものです。大切な自分の家族のため「もらえるものはもらいたい」と必死になるケースもあるでしょう。その点から考えると、相続時の揉めごとは、ある意味やむを得ない部分もあるのです。

遺産分割協議で決着がつかないと「遺産分割調停」へ

相続人間の遺産分割協議で決着がつかなければ、家庭裁判所に申し立て「遺産分割調停」を行うしかありません。

 

上述したAさんも、強硬な兄に対応するため、弁護士をつけて遺産分割協議を進めましたが、双方譲らず、3ヵ月の協議を経ても決着はつきませんでした。

 

この場合、お互いに譲らない限り平行線ですから、事態の進展を促すために家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申し立てる必要があります。

 

遺産分割調停とは、ひとことでいえば「家庭裁判所での話し合い」です。しかし、裁判所を利用するからといって、裁判所がなにかを決めてくれるわけではありません。あくまでも話し合いの場所を裁判所に移したに過ぎないのです。しかも遺産分割調停は、だいたい1ヵ月~1ヵ月半に1回程度しか開かれないため、3、4回話し合うのに半年もの時間が経過してしまいます。

 

また、通常は調停1回あたり3時間程度なのですが、現在は新型コロナウイルスの感染予防のため、1回あたり約1時間半程度に圧縮されています。そのため、解決までの道のりはさらに遠くなってしまいます。

 

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