リーマンショックで黒字倒産…狙われたカタカナ不動産の悲劇

宗吉敏彦はリーマンショックに巻き込まれ650億円の負債を抱えて倒産。いったん経済の表舞台から姿を消した。リーマンショックで地獄に堕ちた男はアジアで再起のチャンスをいかに掴んだのか。宗吉とともに躍進するアジア不動産市場の潜在力と今後の可能性を探る。本連載は前野雅弥、富山篤著『アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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カゴに盛った債権をそのまままとめて買う

誰も知らなかったデューデリジェンスで急成長

 

宗克敏彦は、最初は何をやるかも明確に定まらないまま、中学高校時代、武蔵の同級生で公認会計士だった松木光平と株式会社「クリード」を立ち上げた。1996年6月のことだった。外に出てみるとバブル崩壊で不動産マーケットは荒れていた。

 

企業は財務体質を改善するため手持ちの資産の売却に動いていた。オフィスからマンション、商業施設、社宅やスポーツ施設など市場には売り物件があふれていた。また金融機関は不良債権の山で、その多くが「半値8掛け5割引き」。ピーク時の1~2割の価格にまで下がっていた。1980年代後半のバブル期では考えられない値段だった。

 

これを買いに来たのが欧米の外資系投資ファンドや投資銀行だった。外資系投資ファンドはみんな同じことを知りたがった。

 

「ブラックフライデー」東証では毎週金表日、カタカナ系不動会社のトップが倒産会見するのが通例となったという。(※写真はイメージです/PIXTA)
「ブラックフライデー」東証では毎週金表日、カタカナ系不動産会社のトップが倒産会見するのが通例となったという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「売却するときに、誰が何の目的でいくらで買うのか。売却までにかかる時間とコストはどのくらいか」

 

当時の不動産売却は全く特殊な環境だった。まずは不動産そのものではなく不動産担保の債権の売却が主流になっていた。しかも、一つ一つの債権ではなく数百単位の債権をひとまとめにして「一山いくら」で取引するバルクセールスだった。甘いみかんも腐ったみかんも同じカゴに盛り、買い手にはカゴのなかから好きなものを選択する自由はない。ただ、カゴに盛った債権をそのままにまとめて買う。問題はそれを、いったいいくらで買うのか、それだけだった。

 

もしその不動産が適正な運用をされていたらいくらが適正価格なのか、その不動産を適正化するのにかかるコストや時間はどれくらいなのか、更地であれば誰がどういう目的で買うのか、その時の価格はいくらが適正なのか。不法占拠者がいるのかいないのか、いるなら退去させることができるのか、そのコストはいくらかかるのか……。誰も答えられなかった。今で言う「デューデリジェンス(収益還元法)」での不動産の評価だった。

 

当時は誰もそれを知らなかった。

 

しかし宗吉はやった。不当に評価が下がっているが将来、必ず価値が上がる物件。不法占拠者がいるが、法的に追い出しが可能で転売できる物件を対象に、買えばどれくらいの期間で資金化できるのか、将来どれくらいの収益を生むか、数字で一つ一つ説明するコンサルティング業務を始めた。新しいこと、人がやっていないことをやるのが宗吉は好きだった。

 

人と同じことをしていれば、結果も人と同じだ。人がやらないことをやるからこそ、結果も非凡なものとなる。だからこの時も日本で誰もその言葉すら知らないデューデリジェンスを宗吉はやった。

 

「バブル崩壊に伴って、日本の不動産マーケットは抜本的に変わった。不動産の価値はその不動産そのものではない。その不動産が将来生み出すキャッシュフローから決まる。きっと自分たちは日本でその大転換に最初に気づいた。時代が向かう方向に全速力で走れば、資本も信用も何もない自分たちも、それなりの立場を築けるのではないか」

 

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クリードグループ 代表

1965年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、伊藤忠商事に入社。不動産開発やコーポレートファイナンスに従事したのち、1996年クリードを設立。
当時の国内不動産業界で一般的でなかったDCFの概念を取り入れた不動産投資・評価にいち早く着目し事業をスタート、私募不動産ファンド・REIT運用等を手がける。
2012年からは、マレーシアを皮切りに本格的に東南アジアでの不動産投資に着手。現在、シンガポールに拠点を移し、マレーシア、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナムで事業を展開している。

著者紹介

日本経済新聞 記者

東京経済部で大蔵省、自治省などを担当後、金融、エレクトロニクス、石油、ビール業界等を取材。現在は医療、不動産関連の記事を執筆。著書に『田中角栄のふろしき』(日本経済新聞出版社)がある。

著者紹介

日本経済新聞 記者

2014年よりハノイ支局長としてベトナム全般を取材。現在は日経産業新聞の海外面デスクを務める一方、外国人労働者問題、ASEANなどを取材。著書に『現地駐在記者が教える 超実践的ベトナム語入門』(アスク出版)がある。

著者紹介

連載リーマンの敗者、沸騰するアジアの不動産市場で奇跡の復活

アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

宗吉 敏彦 前野 雅弥 前野 雅弥

プレジデント社

クリードの奇跡の主人公、宗吉敏彦は、2009年1月9日、リーマン・ショックに巻き込まれ650億円の負債を抱えて倒産。いったん経済の表舞台から姿を消したものの再びアジアで復活したかと思ったら、世界的な新型コロナウイルスの…

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