多くの人にとって「介護」は、ある日突然、心の準備もないままに始まります。高齢となった親をもつ人なら、いつ降りかかってもおかしくない問題なのです。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

医師であっても「初めての介護」は手探り状態

在宅介護・医療においては、患者サイドから見ても、さまざまな「解決したい点」が生じてきます。私の場合は、自身が医師だということもあり、どの先生ならお願いしやすいかということが分かりますし、自分で直接依頼もできます。

 

また、介護保険のサービスについても、確かに介護には医師も関わってくるため、多少なりとも私自身に介護の知識はあります。ただ、介護保険の制度は非常に難しく、さまざまなケースがあるため、一概にこうするべきというモデルケースはありません。

 

そういった点については、医師であっても、初めての介護を迎える一般の方と同じスタートラインだったといえるでしょう。

 

この医師は嫌だ、とか、このヘルパーさんは合わないといった患者さん自身の気持ちもありますし、在宅で介護の体制を整えるのはなかなかに難しいことです。

 

私は父のほうで在宅医をお願いしていた医師に、よくいろいろなことを相談していました。自分が医師だからといって、自分だけでは決めきれないこともありましたし、把握できていない症状についてはその医師にいつも聞いていました。

 

CT画像を見てもらったり、通院から入院に変更するときの手続きや、入院していた病院を転院させたときも相談に乗ってもらっていました。

医療と介護・介護と看護の明確な区切りはつけにくい

在宅医は自宅に訪問するわけですから、当然ご家族の介護ぶりも見えてきますし、相談される内容も医療に関することだけでなく、介護に関することもあります。

 

そのときに「介護についてはケアマネージャーさんに話してください」と言われることもあると思いますが、たいていの在宅医は介護の分野にもネットワークをもっていますし、性格的にも困っている人を放っておけないタイプが多いので、一緒に考えることになります。ケアマネさんにつないだり、そこでも無理ならば別の方法を伝えたり……。両親の介護に関しても、家族である私と在宅医、それからヘルパーさんと訪問看護師でコミュニケーションを取りながら行います。

 

医療と介護、介護と看護というのは、システムとしては分かれていますが、具体的な患者さんを目の前にすると、どこからどこまでが医療、どこからどこまでは介護と分けられるものではありません。その区分けというのは、医師やケアマネージャー、看護師の個人的な判断による場合もあるのです。

 

そのボーダーラインについては誰がやってもいいのですが、逆に「誰もやろうとしない」という空白部分が生まれてしまうこともあります。野球で、外野フライを野手がお見合いをして、ぽとりと落とすようなものです。誰も手を出さずに、患者さんの具合だけが悪化し、最後は緊急入院になったりと、残念な結果が生じることもあるのです。

 

そうならないためには、より多くの医師に介護の守備範囲にも足を踏み入れてもらいたいと思います。

 

ただ、そのためには、私たち介護者も困ったことや苦しんでいることをどんどん口にしなければならないと私も介護体験を通じて感じていました。家族だから分かっておかなければならない、自分で判断しなければならないと思うと、どうしても一人で抱え込んでしまいます。

 

幸いにも私は早いうちから周りに頼るようにしていたので大丈夫でしたが、これを一人で見ていたらどうなっていただろうかとは、今でもよく思いますし、今の患者さんやご家族を見ていても思います。

 

人と、特に終末期という大事な時期に関わる人とは、時間をかけながらも密な関係を築いていく必要があると私は思います。それが自分の介護生活を助けることになるからです。

 

私も自分が両親を在宅医として診て治療を施すこともできないわけではありませんでしたが、私には自分の患者さんがいます。自分の生活を守り、維持するためには、ほかの力を借りることが大切なのです。

 

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48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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