2024年4月から勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」上限規制が適用されるが、実現は困難ではないかとの指摘もある。実際、ハードな病院勤務に見切りをつけ、開業や起業に踏み切るケースが多いという。現在、連載中の「『医師の働き方改革』仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」を連載中の著者の佐藤文彦氏が医療機関が抱える問題点の対処方法を解説する。

コミュニケーションを含めたマネジメントが重視される

病院経営を行っている医師のほとんどはプレイングマネージャーです。病院長がその病院の看板で、主要な外科手術は病院長が行っているということも珍しくありません。今までは、こういった臨床ができる医師がリーダーシップを発揮して病院長となり、医師たちを引っ張ってきたところが多分にあります。

 

ただ、これまでにもお話ししてきました通り、ベッド数ひっ迫で医療崩壊かと叫ばれた「コロナ禍」を乗り切り、医療界は「医師の働き方改革」という新たな時代のページをめくろうとしています新たな時代を迎えるにあたって、若手スタッフは上司に対しては、一方的にリーダーシップ発揮するのではなく、しっかりとコミュニケーションをとってくれることを求めています。

 

私自身、出身大学のオーケストラ部に呼ばれて、未だに現役の学生たちと一緒に演奏会のステージに立つことがあります。

 

実は、2019年末ごろから2020年4月の定期演奏会に向けて何度も練習に参加していました(残念ながら、本番を直前にして、新型コロナウイルス感染症が拡大し、部活動自体が中止となり、演奏会もできずじまいでしたが)。コロナ前に、学生たちと食事に行った時などに、コーチングなどのコミュニケーションスキルについても意見を聞いてみました。

 

すると、医学部生も研修医も若い世代はみんなが、コミュニケーションスキルに強い関心を持っていました。これだけ関心が高いとなると、病院経営者がコーチングなどのコミュニケーションスキルをどれだけ取り入れていて、それを病院運営にどのように反映しているかについては、すでに若い医師が勤務先や転職先を考える時の重要な判断材料になっていると言わざるを得ません。

 

実際に、院内のコミュニケーションの大切さに気がつき、病院長自身が、コーチングなどのトレーニングを始めたり、コーチングやチームビルディング等の手法を積極的に取り入れたりして、組織の活性化を行っている病院も増えてきています。

「医師の働き方改革」のファーストペンギンたれ!

この新型コロナウイルス感染症といった病院を取り巻く大きな環境の変化の中で、職場の雰囲気がよくないと若手医師が職場を離れて行ってしまうということに危機意識を抱き、コーチングなどを取り入れている病院がすでに出てきているのです。取り組んだ多くの病院では、多職種間の連携が良くなり、退職者が少なくなったという効果も現れているようです。

 

今からでも遅くありません。病院経営層の方は、コミュニケーションについての理論だけでもまずは学んでみることをお勧めします。

 

コミュニケーションという「目に見えない道具」をしっかりと使いこなしていくことが、「目的をきちんと説明されて、納得したことを丁寧にこなす」ことが得意な若い医師たちの定着に繋がり、地域で自院のポジションを強固なものとします。コミュニケーションスキルの活用は、これからもずっと地域に必要とされる病院になり続けるための極めて有用な手段に必ずなってくれます。

 

時代の変化に恐れず、「医師の働き方改革」のファーストペンギンになる勇気を持つマネジメント能力こそが、今、医療機関のトップたちに強く求められているのです。

 

佐藤文彦
Basical Health産業医事務所 代表

 

 

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

佐藤 文彦

中央経済社

すべての病院で、「医師の働き方改革」は可能だという。 著者の医師は「医師の働き方改革」を「コーチング」というコミュニケーションの手法を用いながら、部下の医師と一緒に何度もディスカッションを行い、いろいろな施策を…

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