予備校の売りの一つに有名大学出身や有名大学院の学生というものがあります。しかし、多くの有名大学出身者や大学院生は教えることのプロというわけではありません。医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役の長澤潔志氏が、カリスマ講師と普通の大学院生講師の違いについて解説します。

難問を解くときのカギになる授業内容からの脱線

たとえば食べものを食べると、タンパク質はアミノ酸に分解され、肝臓、腎臓を通って、尿素になって排出されます。これが縦軸です。しかし、これだけ分かっていれば果たして大丈夫と言えるでしょうか? 

 

ある医学部の入試問題を見てみましょう。「ヒトが排出する尿酸は何に起因していて、その値が高いとどんな障害が出るか論述せよ」とありました。どんな教科書も参考書もヒトの窒素化合物は尿素で排出、尿酸は爬虫類、鳥類が排出すると書かれているだけですので、そこは講師の力が頼りになるのです。

 

つまり、教科書や参考書のポイントから少しだけずれた話を縦横無尽に語れる講師の知識が、受験時の最大の力となるのです。

 

さて、先ほどの入試問題に戻りますが、尿酸というのは私たちの垢から作られます。60兆ある細胞が徐々に老化して死んでいくので、毎日たくさんの細胞が入れ替わります。細胞にはDNAやRNAが含まれており、このDNAやRNAである核酸が大量に処分されることになります。これが尿酸の正体。

 

ですから、答えは「尿酸排出に起因するものは核酸であり、尿酸値が高くなると、尿酸が非水溶性のために結晶化し、皮下に溜まるので、痛みの障害が現れる。通称、痛風と呼ばれている」となるわけです。

 

本当の講師はこのような説明から始まり、ではなぜアミノ酸をわざわざ尿素に変えなくてはいけないかも教えてくれます。アミノ酸からトランスアミナーゼによって外されたアミノ基はすぐにアンモニアになります。皆さんもアンモニアは、化学実験室などに置いて厳重管理されている劇物であることはご存じでしょう。海から上がって乾燥した陸上で闊歩し始めた動物にとっては、極めて危険なものなのです。

 

だからこそ尿素に変えなくてはいけなかったのです。このくだりは、生物の進化と関わっているのです。すなわち、腎臓から膀胱を通って排出される窒素酸化物の話(教科書、参考書では全く進化とは関係のない章となっています)と同時に、進化の話をしているわけです。

 

昔のように「お父さんは自分で教科書と参考書で勉強したものだ」などということが通用する時代ではありません。また、そのような問題状況に対処できる講師はそれなりの勉強と経験値というものを積んでいることが必要になります。

 

ですから、臨床経験がまだ少ない医師と同様に、あえて言いますが、30歳前後の若造ではダメなのです。ましてや、ただ一流大学の名だけの学生や院生など何をか言わんや、です。したがって、東大の名だけで、東大〇会予備校などと宣伝しているのを見ると、いかに親たちが内容を考えず表面だけで決めているか、またそうした親たちを見透かしたかのような宣伝そのものにも腹が立ちます。

 

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医学部受験の闇とカネ

医学部受験の闇とカネ

長澤 潔志

幻冬舎メディアコンサルティング

講師歴30年の医学部専門予備校代表の長澤潔志氏が、実体験をもとに、合格率を偽って、「授業料を挙げる予備校」、「コネとカネがなければ合格できない推薦枠を設ける大学」、「指導力不足で受験生を浪人に導く高校」など、さま…

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