日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺された兄姉と義妹との間で起きたトラブルについて、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士が解説します。

B子さん「そうだ、A知ってる? D子さん、マンション売るんだって」

 

Aさん「え? あの9,000万円の高級タワーマンション?」

 

B子さん「そう。なにか事情でもあるのかしらね」

 

Aさん「……なにかおかしくないか?」

 

Aさんが違和感を覚えて調べてみると、D子さんに散財癖があることが発覚。ブランドもののバッグや洋服を買いあさったりと、昔からCの財産を浪費していたことが分かったのです。

 

更には、AさんとB子さんはキャッシュでマンションを購入したと聞いていましたが、それも嘘でした。実は高額のローン(5000万円)があると判明したのです。

 

Aさん・B子さん「ちょっとD子さん、これはどういうこと? これじゃCがあんまりに浮かばれないじゃない!」

 

AさんとB子さんが問い詰めても、D子さんはどこ吹く風といった様子でそっぽを向いてしまいます。

 

D子さん「でも、義兄さんも義姉さんも、遺産はいらないと言ったじゃないですか。今更いわれたって知りませんよ」

 

Aさん「だが、俺たちはCの大学進学のために、昔から色々やってきたんだ。ローンの支払いで残った分はせめて、きちんと遺産分割をするべきなんじゃないのか?」

 

B子さん「そうよ、Cのお金を食いつぶすだけ食いつぶして! あんまりにCが不憫だわ!」

 

過去Cに資金援助をした事実を引き合いに出すと、D子さんは耐えかねたように声を荒げます。

 

D子さん「あなた方は遺産はいらないってハッキリ言いましたよね? それを蒸し返されたって知りませんよ!!」

 

Aさん・B子さん「書面にはしていない! 遺産分割は口約束の状態なんだから、あんなのは無効だ!」

 

三人の激論は何時間も続き、夜になっても決着はつかなかったといいます。

 

一度、約束しましたよね!(※画像はイメージです/PIXTA)
一度、約束しましたよね!(※画像はイメージです/PIXTA)

解説:口頭による遺産分割協議は有効か?

口約束による遺産分割協議が論点ですね。遺産分割協議は様式を問わないので、口頭による遺産分割協議も成立します。

 

しかし、書面に残していない場合には、その有効性を証明することができません。Dさんが、いくら「口頭で決めたじゃない!」と主張しても残念ながら証明する術がないのです。

 

そのため、訴訟を起こしても、調停に持ち込んでも、認められる可能性は限りなく低い状況かと思います。

 

このようなトラブルを防ぐためにも、遺産の分け方を決める際には、プラスの財産とマイナスの債務の両方を相続人全員で必ず確認し、分け方を決めたら、遺産分割協議書という書面に残しておくことをおすすめします。遺産分割協議書には署名と実印での押印を行い、印鑑証明書も一緒に保管しましょう。

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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