領収書よりも、レシートを勧める理由
ここまでの前提をふまえて、レシートと領収書をくらべてみましょう。すると、レシートのほうが、情報量が多いことがわかるはずです。
昔は、レシートでも商品名がわからないものがありましたが、いまはかなりの情報がレシートに記載されています。支払った日はもちろんのこと、その商品名や、支払金額、お釣り、ポイントの有無など、取引に関する情報はほぼ網羅されています。
それに対し、手書きの領収書にはそこまで細かな情報は書かれていません。とくに宛名が「上様」、品目が「商品代」などと書かれた領収書は、実質的な情報は皆無です。
しかも、税務職員の立場になって考えると、レシートよりも領収書のほうが疑わしいと感じられます。なぜなら、手書きの領収書は簡単に改ざんすることができるからです。
たとえば、プライベートな支払いと、事業用の支払いを一緒くたにして領収書をつくってもらえば、内訳はわかりにくくなります。金額そのものも、手書きなら書き換えることは可能です。
一方、先ほどお話ししたとおり、いまのレシートには相当な情報が詰まっていますから、そっくり偽造することはほとんど不可能です。
こういった意味から、私は領収書よりも、レシートを必要経費の証拠書類として保管しておくことをおすすめします。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
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