NHKの受信料は「逆進的」…税金で徴収するほうがマシなワケ

公平とはいいがたい受信料の徴収システムや、特殊法人としては巨額すぎる余剰金の存在など、なにかと批判されがちなNHKですが、コロナ禍にあえぐ国民への配慮か、いよいよ受信料引き下げが実現する見込みです。しかし、いっそ受信料の徴収をやめて税金による運営に切り替えたほうメリットが高いと考えられます。経済評論家・塚崎公義氏が提案します。

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現在の受信料制度は「非効率」かつ「逆進的」

NHKの受信料制度は非効率です。だれがテレビを持っているのか調べて、請求する必要がありますが、支払ってくれない場合には国税等と異なり、強制的に徴収することが困難です。

 

少なくとも、受信料の徴収は税務署に委託して、払わなければ強制的に徴収してもらう、といったしくみが必要でしょう。だれがテレビを持っているかを調べるのも面倒ですから、「一定以上の所得がある人はテレビを持っていると推定する」といったことも要検討です。

 

もうひとつの問題として、NHKの受信料は「逆進的」だ、ということも挙げられます。豊かな人も貧しい人も、原則としてだれもが同じ金額ですから、これはまさに逆進的というべきでしょう。

 

所得税は、所得が高い人ほど税率が高くなる累進課税です。したがって、所得が2倍になると、税額は3倍にも4倍にもなることがあります。これは、税を負担する能力のある人から取る、ということに加えて、貧富の格差を是正する、という崇高な目的に沿ったものでもあるのです。

 

これに対して消費税は、原則としてみんな同じ税率ですから、逆進的だという人もいるわけです。しかしそれでも消費税の場合は、所得が2倍の人なら消費額もだいたい2倍ぐらいで、ならば消費税も2倍ぐらいになるだろう…と考えることもできます。それとくらべてみても、受信料は明らかに逆進的です。

 

(※渋谷のNHK放送センター/PIXTA)
(※渋谷のNHK放送センター/PIXTA)

「ケーブルテレビ方式」にすると、NHKはジリ貧に!?

NHKの受信料がそれほど問題になるのなら、いっそのことNHKを民営化してしまう、という選択肢はどうでしょうか。「受信料の支払い義務を廃止して、受信料を払わない人にはNHKが見られないようにスクランブルをかける」といった主張を耳にします。それはNHKを民間のケーブルテレビ等と同様の立場に置くということなので、「NHKを民営化して公共放送を廃止する」ということになるはずです。

 

理屈を聞くと一理あるような気もしますが、よく考えれば現実的ではないことがわかります。

 

まず、資金面が持たないでしょう。「契約しない」という人が多ければ、コストを受信者数で割った1人当たりの受信料がその分だけ高くなり、ますます契約しない人が増える、という悪循環に陥りそうですから。

 

資金面以外も問題は多そうです。たとえば障がい者向けの番組等々は、収益性が劣りますから、民放に任せておくと放送されなくなってしまうでしょう。したがって、これは公共放送が担う必要があります。

 

ニュースや災害情報等々についても、公共放送があれば国民は安心するというのであれば、NHKは存在する意義があるといえるでしょう。

 

国民に教養番組を提供することも、公共放送の役割かもしれません。民放は視聴率を気にするので、教養番組等を放送するインセンティブが小さいかもしれませんから。国立博物館等々が存在するのと同様の理由ですね。

 

このように、公共放送は必要だけれども、受信料制度に問題があるということならば、NHKの運営費を税金で賄えばよいのです。

 

「私はNHKを見ないのに、私が払った税金をNHKに使ってほしくない」という人がいるかもしれませんが、税金というのはそういうものでしょう。「私には子がいないので、学校教育の費用に税金を使ってほしくない」という人がいても、学校教育は税金で運営されているのですから、それと同じことですね。

 

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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