AIを活用して水道管の水漏れを発見できるか
AIを使った社会問題の解決を競う「総統杯ハッカソン」
デジタル担当政務委員として私が取り組んでいる「総統杯ハッカソン」という試みがあります。これは総統府の主催で毎年一回行われるもので、「持続可能な目標」というテーマに沿って民間からアイデアを募集します。
たとえば、「テレビ会議システムを用いて地方や離島の医療問題をいかに解決するか」「水道管のどこが水漏れしているかを確認するのに、AIを用いる方法はあるか」「独居老人の住居でどのような場合に最も失火しやすいかをAIで分析するには、どうすればいいか」「地震が起こったときに、政府がどうやって独居老人の側に警報を伝えるか」など、様々な問題について、「デジタルがどのような解決方法を提供できるか」について意見を出し合って競うのです。
これらのテーマと解決方法は、政府と民間の社会活動に関与する人たちが一緒になって提案し、毎年上位に入った5つのアイデアが表彰されます。受賞の賞品はプロジェクター機能を備えたトロフィーで、プロジェクターのスイッチをONにすると、蔡英文総統の「みなさんが3カ月かけて作り出した作品を、私たち政府は今後1年以内に必ず公共政策として実現させます」というメッセージが流れる仕組みになっています。
この試みは海外からも注目されていて、ニュージーランドのウェリントン地方政府が2018年のハッカソンに参加したチーム「搶救水寶寶(Save the Water Babies)」を招き、水漏れ問題の解決に協力を仰ぎ、それ以後、「Water Box」と名づけられたこのプロジェクトをウェリントン側のチームが引き継ぐということもありました。
この「搶救水寶寶」チームは、今年のハッカソンにも参加しています。今年の彼らのテーマは、台湾にある農地工場(農業用地に置かれた工場)に関するものでした。「農地工場は農地を汚染してはならない」と法律で定められていますが、実際には汚染されているところもありました。そこで新たな法律を可決させ、実際に農地を汚染した場合には、中央政府の決定によって水や電力の供給を断つことができるようにしようというのです。
ただ、実際にそうした問題が起きた場合、工場側が「私たちが汚したのではない、上流の工場が汚染したんだ」と言い始める可能性もあります。今のままだと誰が汚染したかがわからないのです。
それを解決するために出されたアイデアが、ソーラー発電による電力を利用した機器を用水路や灌漑設備に直接装着し、水質検査の結果をネット上に分散して置かれたアカウントに常に記録するというものでした。自分の工場が汚染していないことを証明し、誤って検挙されたくないのであれば、この機器を工場のやや上流に置くだけでいいのです。そうすればどこが汚染源なのか、誰に対しても一目瞭然です。
このハッカソンという活動は、実際には経済部の中小企業局が主導しているもので、多くの中小企業も参加していますが、各地が抱える問題を解決するために大いに役立っています。
オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
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