「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

年金受給者が確定申告の申告不要制度を使うメリット

では、申告不要制度を使うメリットはどこにあるのでしょうか?

 

まずひとつは手間がかからないという点です。わざわざ混雑する税務署に行く必要がなくなります。

 

また、確定申告をしないということは、源泉徴収されている税額は別として、所得税の納税がなくなるということです。これがメリットになる人もいるでしょう。

 

ただし、この制度を使ううえでの注意点がふたつあります。1つ目は、「確定申告不要制度の条件に合致する人でも、確定申告をしたほうがいい」というケースがあることです。

 

これは、言い換えれば「確定申告をして還付金を受け取れる場合」ということになります。

 

たとえば、多額の医療費を支払った(医療費控除を使う)場合や、災害や盗難にあった(雑損控除を使う)場合のように、所得控除などを使える人は、確定申告をすれば還付金をもらえる可能性があります。この場合、申告不要制度を使えたとしても、確定申告をしたほうがおトクです。

 

2つ目の注意点は、申告不要制度は国税である所得税の制度ですから、地方税の住民税には使えないということです。

 

したがって、税務署への確定申告はいらないけれど、別途、住民税の申告が必要というケースがありえるのです。この判断をみずからおこなうのは難しいので、お住まいの市区町村などに相談してください。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

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小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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