90歳を超えると最大の関心事は自分の健康のこと
この人も死んだ あの人も死んだ
父が亡くなって5年、10年と月日が経つにつれ、近所の人たちも年をとり、身内を亡くす人が続々と出てくるようになった。がんで夫を亡くしひとり暮らしになった70代の主婦、グループホームに入居させていた妻を亡くした80代の男性、こちらもひとり暮らしになった、特養に入っていた105歳の母をやっと見送ることができた息子。息子といっても80代後半の老人だ。まさに、現代日本の縮図である。
町内会の回覧板で目につくのは訃報ばかりだ。母は、それを見るたびに「あの人も死んだわ」「へえ、この人も死んだんだ」と、亡くなった人のほとんどが母よりずっと若いというのに、そんなに驚くようすもない。
90歳を超えると、最大の関心事は、自分の健康のことなので、他人のことに一喜一憂しなくなるようだ。人の死に驚くのはまだ若い証拠だ。
「あなたのお母さん、まだ自転車に乗っているの?」
わたしが笑いながらうなずくと、相手から必ずこう言われる。
「危ないからやめさせなさいよ。転んだら終わりよ」
でも、言ったところで母はやめないので、わたしは余計なご忠告はしないことにしている。母は幼稚園児ではない。自分がやめたいときにやめるはずだ。それに、仮に自転車で骨折しようが、死のうが、それは本人の自由だからだ。
松原 惇子
作家
NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク 代表理事
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