中国は1953年、第1次5ヵ年計画を策定したが、第11次以降は「計画」から「規画」へと名称変更された。2020年には「第13次5ヵ年規画」(2016〜20年)が終了しており、2021年3月の全国人民代表大会(全人代)では、2021〜25年を対象とする第14次5ヵ年規画が決議される予定である。本記事では、一般的な5ヵ年規画の特徴や策定プロセスを見ていく。なお、本稿は筆者が個人的にまとめたものである。

党・政府のスローガン的側面が強まっている?

上述、「計画」から「規画」への名称変更にもかかわらず、政府が目標達成に重い責任を負う約束性指標が増加するなど、近年、指令的規画への逆戻りとも思われる傾向が見られる一方で、規画の内容がより理念的、包括的で、また党・政府のスローガンを示すようになっている面もある(例えば、胡錦濤政権での「科学的発展観」、習政権下での「新常態」)。

 

このため、筆者の友人のある中国人学者は中央の規画にはさほど実質的な意味はなく、むしろ中央の規画を受けて、あるいは並行して、各部門や各地域が策定するより詳細で具体的な規画を見ることが必要と述べている。

 

例えば、第13次5ヵ年規画でも鉄道・高速道路建設計画の詳細は交通運輸部や当該地域の規画に記載され、また環境保全に関する計画は生態環境部の他、各地域がそれぞれの環境汚染の実態を踏まえた環境改善目標を各地域の規画で掲げている。

 

2017年4月に中央が発表した河北省雄安新区建設について、第14次規画は国土空間の有効利用、創新(イノベーション)や地域経済の協調推進といった文脈で新区の理念に触れるに止まり、具体的な詳細は河北省5ヵ年規画に委ねられるということになろう(『[連載]中国「雄安新区計画」は習近平主席の政治遺産になるか?』参照)。

 

実際、河北省はすでに18年4月と12月、各々「河北雄安新区規画綱要」「総体規画」を公表して具体化を進めており、その中で創新、環境保全、社会民生関係の38にわたる主要指標について、35年目標値を明らかにしている。

 

19年2月に中央が発表した「粤〈ユエ〉(広東)港(香港)澳〈アオ〉(マカオ)大湾区(グレートベイエリア)発展規画綱要」についても、同様の文脈で触れられることになろうが(実際、第13次5ヵ年規画ですでに大湾区を推進することがうたわれている)、詳細は大湾区の「規画綱要」、およびそれを受けて、19年7月広東省党委員会・政府が発表した実施意見と3年行動計画、同年11月に北京で開催された大湾区領導小組(指導小チーム)会議後に発表された大湾区内のヒト、モノ、カネの自由な移動推進を狙った16項目措置などを見る必要がある(『[連載]最大の課題は香港との緊張関係…中国政府「ビッグベイエリア構想」』参照)。

 

ここでの論点は以下の3つに集約される。

 

①規画がよりガイドライン的性格を強めているか、指令的なものに逆戻りしているのか、また経済運営全般にどう影響しているかは、中央の規画だけでなく、各部門・地方の規画も含めて見ていく必要がある。

 

②仮に各部門・地域の規画がより実質的な意味を持つようになっているとすれば、それ自体は経済運営の分権化という点からは評価されるべきである一方、各部門・地域の規画策定にどの程度、中央が関与しているかに注意する必要がある。例えば、上記河北省の雄安規画綱要・総体規画は党中央委員会と国務院の承認を経て公表しているものだ。

 

③中央の規画が仮により象徴的なものになりつつあるとしても、その時の指導部が中期的にあるべき経済の姿をどう考え、それをどのような経済運営で実現しようとしているかを推察する上で、中央の規画は最も有効な材料になるという点で、その重要性は変わらない。

 

以後は、第13次5ヵ年規画の実施評価、第14次規画で注目すべき点について見ていく。

 

 

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