相続発生時、トラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は事例から、公正証書遺が無効となるのはどのような場合か、見ていきましょう。

 

この「特段の事情」とは、遺言が作成された経緯等の事情であると推測されます。

 

この点については、同判決は、まず

 

「本件遺言書作成当時、遺言者は、うつ病と認知症に罹患しており、平成一九年二月一九日と二〇日には大声独語、幻視幻聴、妄想、ベッドよりの滑落、体動、言語活発などの問題がある行動があり、同月二八日には精神科のI医師による情動不安定、易怒性、常同保続の所見から種々の薬剤が処方されていた状態であり、同年三月一日の時点においてもリスパダールを処方され、夜間時々覚醒していて不眠を訴えており、遺言者は、判断能力が減弱した状態にあり、意思能力を備えていたと認めることが困難である。」

 

と意思能力が無いことを認定した上で、

 

「この認定・判断を左右するに足りる特段の事情があるかをみると、②上記(2)エに説示したとおり、本件においては、遺言者のセンペルへの転院が本人の希望に反して受遺者の一存で行われ、受遺者が遺言者に無断で遺言者の住所を受遺者の自宅住所に変更し、無断で印鑑登録まで行い、遺言者が新たに遺言をしたいとの話を聞いてはいないのに、受遺者が遺言者から全財産の相続を受ける内容の遺言を作成する手続を行っている上、A公証人の本件遺言書等の作成手続には本人(自宅住所)確認の不十分、受遺者を排除していない、署名の可否を試みていない、遺言者の視力障害に気づいていない、任意的後見契約を遺言者が理解できたかなどの諸点に疑問があることは、むしろ上記①の認定・判断に整合するものである。」

 

「さらに、③遺言者は、自分の全財産を妻であるCに相続させるとの自筆による旧遺言書を作成しているところ、平成一九年三月二日当時、Cの病名やその進行程度について正しく認識しておらず、Cが生存中であるにもかかわらず、全財産を受遺者に相続させる旨の遺言を作成する合理的理由が見あたらない(受遺者の主張は、その前提を欠く。)。

 

このことは、本件における重要な間接事実であり、仮に、遺言者との間にA公証人の回答にあるような遺言者の発言があったとしても、突然に現れたA公証人の来訪目的や遺言等の作成の意味を十分に理解し、真に本件遺言等を作成する意思の下に遺言者が応答したものと認めることは困難であるというほかない。」

 

として、遺言を無効と判断しました。

 

次ページ「公正証書遺言の無効確認」は非常に難しい

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