後期高齢者の「医療費窓口負担増」が医療の過剰提供を是正する

政府は2月5日、年収200万円以上の後期高齢者の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる内容を盛り込んだ法案を閣議決定しました。医療費の自己負担率を引き上げることで、医療サービスの供給量が適正に近づくのなら望ましいことです。その場合、低所得者の負担率も引き上げたうえで、彼らに別途支援策を考えるべきだと考えます。本記事では、医療現場の過酷さと医療費のバランスをどのようにとるべきか、経済評論家・塚崎公義氏が考察します。

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医療費増なら、自己負担増は当然の流れ

日本国民の高齢化による医療費の膨張が止まりません。それに伴い、健康保険料も値上げされていますが、医療費の一部は財政負担であることから、財政も圧迫されているのです。

 

今後についても状況は看過できません。団塊世代が2025年に後期高齢者となるのをはじめ、ますます増えるであろう高額な治療薬、さらなる伸長が予想される国民の平均寿命などからも、医療費は膨張を続け、財政等を一層圧迫することが予想されています。

 

そこで政府は、後期高齢者の医療費の自己負担割合を、原則1割から2割に増加させる法案を閣議決定しました。

 

これについては「高齢者がかわいそうだ」という意見もあり、「年寄りイジメだ」といった批判もあるのでしょうが、財政再建のためには、だれかに泣いてもらわなくてはならないわけですから、それが高齢者であっても仕方ない、ということなのでしょう。

 

そのあたりはさまざまな議論があるでしょう。「シルバー民主主義」をどう乗り越えるのかという点にも注目です。ちなみにシルバー民主主義というのは、高齢者の数が多くて投票率も高いことから、政治家たちが高齢者に都合の悪い政策を採用したがらない、ということです。

 

しかし筆者は、上記とはまったく異なる観点から、自己負担割合の引き上げを支持しています。それは「医療サービスを減らす」というものです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

安すぎる医療費が「医療サービスの供給過剰」を招く!?

高齢者の「医師に治療してもらうことで、病気が治ってうれしい」と感じる喜びと、「レストランで美味しいものを食べてうれしい」と感じる喜びが同じ大きさだとします。ここでは仮に、外食費を1500円としておきましょう。

 

医療費が1万円の場合、1割負担の高齢者にとっては、同じ喜びを得るために必要な費用は1000円ですから、外食をせずに医療サービスを受けるでしょう。その結果、財政等には9000円の負担がかかります。

 

負担割合が2割になると、高齢者は「2000円払って医療サービスを受けるより、1500円で外食をしよう」と考えるようになります。高齢者の負担は500円増えますが、財政等の負担は9000円減ります。

 

そうであるなら、たとえば9000円減った負担のうち、3000円を高齢者への年金支払いに使うという選択肢も出てきますね。ならば、上記のように高齢者から「年寄りイジメだ」と批判される代わりに感謝され、次の選挙では与党に投票してくれるかもしれません。まさにシルバー民主主義的政策ですね(笑)。

 

なぜそんなことが可能かといえば、1割負担だと、本来提供されるべきでない過剰な医療サービスが提供されることになるため、その部分を減らすだけで大きな金額が浮くのです。

 

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経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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