日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「老衰死亡率」。老衰は日本人の主要な死亡要因にも数えられますが、その死亡率からは日本が抱える高齢化問題が見えてきました。

老衰で亡くなるためには、お金がかかる

老衰の死亡者は、戦後、減少傾向にありましたが、2000年以降、増加に転じ、今では日本人の死因第3位にもなりました。

 

老衰で死ぬためには、他に死亡要因がない状態でなければなりません。ある意味、老衰に至るまで、死亡に至るような病気にはかからず、健康でいなければなりません。昨今、老衰が増加傾向にあるのは、病気では死亡に至るケースが減り、自然と命の灯が消える人が増えているから、だといえます。高齢化の進展はもちろん、医学の進歩なしに老衰の増加はありえないのです。

 

そんな老衰ですが、 厚生労働省によると、1975年の老衰死亡者の9割が自宅で亡くなっていました。しかし2018年には、自宅で老衰で亡くなる人は15%程度まで減少。男性で多いのが「病院」で、「老人ホーム」が続きます。一方で女性の場合は「老人ホーム」が最も多く、「病院」がそれに続いています。順位に違いはあれど、昨今は「老人ホーム」で大往生を迎えるケースが増えています。

 

できることなら自宅で人生に幕をとじたい、と考える人も多いでしょうが、高齢者の一人暮らし世帯が増加しているなか、それは難しい状況だといえるでしょう。その代わり、今後は老人ホームで老衰で亡くなるケースがさらに増えていくと考えられます。

 

そうなると、頭に浮かぶのは介護費用です。老衰による穏やかな最期を望むのであれば、健康寿命を迎えたあと、十分な介護サービスを受けることがひとつの条件だといえそうです。

 

平均寿命から、日常的・継続的に医療や介護に依存して生きる期間を除いた健康寿命は、2016年時点で、男性が72.14歳、女性が74.79歳。当時の平均寿命から考えると、男性は8.84年、女性にいたっては12.35年ほど、介護は必須になる計算です。

 

現在の介護保険制度では、要介護1~5、要支援1~2の計7段階の認定を受けると、その度合いに応じて国の介護保険サービスが利用できます。介護保険サービスの自己負担は原則サービス料の1割。一定以上の所得がある場合は所得額に応じて2~3割負担となっています。

 

厚生労働省による『介護給付費等実態統計の概況』(令和元年)によると、受給者1人当たりの介護予防サービス費が最も高いのは「佐賀県」で3万7400円。一方で、受給者1人当たりの介護予防サービス費が最も少ないのが「沖縄県」で2万6700円(関連記事:『県庁所在地別「介護費用」ランキング…最も負担の大きい市は?』)。

 

さらに要介護となった場合、受給者1人当たりの介護サービス費が最も高いのは「鳥取県」で21万5700円。一方で、受給者1人当たりの介護ービス費が最も少ないのが「北海道」で18万7400円となっています。

 

また厚生労働省『平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、年金受給額の全国平均は14万5865円。要介護度があがると、年金だけで十分な介護サービスを受けられそうもありません。さらに厚生労働省の『国民生活基礎調査』(2019年)によると、「貯蓄がない」と回答した高齢者世帯は14.3%。7世帯に1世帯にも上ります(関連記事:『高齢者7世帯に1世帯は貯蓄なし…「介護の現場」に漂う絶望感』)。

 

コストから考えていくと、老衰で亡くなるのも、なかなかハードルの高いことのようです。

 

 

 

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