自分の会社は税務調査の対象にはならない…そう油断してはいませんか。確かに調査の頻度に差はあるかもしれませんが、調査に来ないという保証はどこにもありません。調査官からの「質問」にどう対応すべきかわかりますか? ここでは元審判官の筆者が、よくある質問を勘定科目ごとに解説。今回のテーマは「貸付金」です。※本連載は、尾崎真司税理士の著書『税務調査リハーサル完全ガイド(第2版)』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

証明すべき「貸付条件の正当性」「経済合理性の有無」

税務調査官の質問②

「グループ子会社A社からの利息は受取利息に計上されていますが、B社からの利息は計上されていないようです。各子会社に対する貸付条件は決まっていますか?」

 

【調査官が知りたいこと】

1. 各子会社に対する貸付条件は適正か?

2. 利息を収受していないものはないか? 収受していない理由は?

<対応と対策>

1. 子会社ごとの貸付条件に恣意性がないことを証明する

 

⇒グループ子会社に対する貸付金も、同族関係者に対する貸付金同様に、恣意性が介入していないことの説明が税務調査では重要です。特段の事情がない限りは子会社ごとの貸付条件は統一されていることが通常でしょう。適正な貸付条件に基づき金銭消費貸借契約書を締結し、その契約書に基づいて返済を実行している事実を示すことが必要です。

 

2. 業績不振子会社に対する支援は、合理的な再建計画に基づくものであることを、外部利害関係者の関与状況や数値により明確に説明できるようにする

 

⇒業績不振子会社の再建のため、親会社が無利息貸付や債権放棄などを行う場合があります。これらの支援により親会社が負担した損失は、税務上は一義的には子会社に対する寄附として取り扱われます。

 

しかし、金融機関に対して債務免除又は金利減免交渉を行う過程で、親会社に対しても一定の損失負担が求められるケースもあります。このような実態に鑑み、親会社が損失負担することの経済合理性が認められる場合に限り、税務上はその損失を寄附金としては取り扱わないこととしています。経済合理性があるかどうかは、以下の点を総合的に勘案して判断されます。

 

●損失負担等を受ける者は、「子会社等」に該当するか

●子会社等は経営危機に陥っているか(倒産の危機にあるか)

●損失負担等を行うことは相当か(支援者にとって相当な理由はあるか)

●損失負担等の額(支援額)は合理的であるか(過剰支援になっていないか)

●整理・再建管理はなされているか(その後の子会社等の立ち直り状況に応じ

て支援額を見直すこととされているか)

●損失負担等をする支援者の範囲は相当であるか(特定の債権者等が意図的に

加わっていないなど恣意性がないか)

●損失負担等の額の割合は合理的であるか(特定の債権者だけが不当に負担を

重くし又は免れていないか)

 

支援の経済合理性に関する、調査官への説明ポイントは以下のとおりです。

 

①外部利害関係者の関与を説明する

金融機関や取引先などの外部利害関係者からの要請、折衝の内容、最終合意までの経緯などを、具体的に説明できるようにしておく必要があります。特に、最終的に親会社単独での支援になった場合には、支援に至る過程で外部関係者から受けた要請や折衝の内容は、単独支援に関する合理性の重要な判断材料になります。

 

②支援をしない場合に、より大きな損失を蒙る可能性を説明する

支援をしなかった場合に、今後親会社側に発生する可能性のある追加負担額と、支援を行うことで軽減される金額とが、明確な数値として表されている必要があります。

 

③過剰支援でないことを説明する

当初の支援計画が妥当なものであっても、その後の状況変化によっては過剰支援として寄附金認定がなされる可能性があります。親会社において再建計画の進捗管理を徹底し、状況の変化に応じて計画を見直すことで、過剰支援でないことを数値として明確に示す必要があります。

 

 

尾崎 真司

税理士/あいわ税理士法人 パートナー

元国税不服審判所国税審判官

 

 

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