「子供が巣立った途端、気力が…」高齢主婦に潜む脳の危険信号

近年の研究では、脳の寿命も身体と同じように健康な働きを維持したまま延ばしたり、知的活動で活性化できることが明らかになっています。本記事では、高齢者の「意欲の状態」から推察できる健康不安について、アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学の専門医が解説します。※本記事は、新井平伊著『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)から抜粋・再編集したものです。

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脳の機能維持には「取り組みへの意欲」が不可欠

脳の老化は、次の4段階に分けて仕組みを知り、それぞれに予防方法を考えます。

 

身体全体の老化

脳の血管の老化

脳の神経細胞の老化

メンタルの老化

 

 脳の神経細胞の老化──「楽しみ」を見つけてカバーする 

 

脳の寿命と密接な関わりがあるのは、脳を構成する神経細胞(ニューロン)(注1)とグリア細胞(神経膠細胞)(注2)のネットワークです。

 

(注1)神経細胞(ニューロン):脳内の細胞は、神経細胞と、その働きを支えるグリア細胞の2種類に分類される。神経細胞は情報の伝達に関わり、脳全体で一千数百億個、寿命は150年あるとも言われる。

 

(注2)グリア細胞(神経膠細胞):中枢神経の内部でニューロンの間を埋めるような細胞要素、つまり星状膠細胞、稀突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞を総称する語。

 

神経細胞は情報処理の主役で、グリア細胞は神経細胞を保護し、栄養を与えたり老廃物を排除するのが役目です。ニューロンと血管を繋ぐ役割も担っています。 

 

神経細胞の老化には、いくつかパターンがあります。

 

まず、数が減っていく老化です。加齢に伴い、神経細胞一つひとつの働きは低下しますが、全体の数も減ってしまうのです。その数は、毎日10〜20万個に達するという説もあります。もっとも、脳の神経細胞は1千数百億個もありますから、みるみるうちに機能が衰えていくわけではありません。

 

しかし、神経細胞が減るにつれ、脳は萎縮して、シワが深くなっていきます。高齢者の脳をMRIやCT(X線コンピュータ断層撮影)の画像で見れば、認知症ではなくても萎縮している様子がわかります。正常な老化でも、神経細胞の減少によるダメージは受けるのです。とはいえ、物忘れのような症状が50代くらいから現れるケースは少ないといえます。

 

記憶を司っているのは大脳辺縁系にある海馬(かいば)(注3)ですが、海馬が衰えるのは、もっと高齢になって正常老化が進んだ場合が多いからです。

 

(注3)海馬:大脳辺縁系の一部で、側脳室の近くにある部位。古皮質に属し、本能的な行動や記憶に関与する。

 

老廃物が溜まるのも、脳の老化現象です。神経細胞の中だけでなく、神経細胞と神経細胞の隙間やくも膜の下などに、いろいろな老廃物が溜まってきます。リポフスチンという色素が沈着して作られる球体は、皮膚にできるシミと同じ性質のものです。神経細胞の減少や老廃物が溜まっていく様子は、顕微鏡や画像診断で確かめることができます。

 

神経細胞が減ると新しく生まれてくる機能もあるのですが、ごくわずかにすぎません。代わって神経細胞を保護してくれるグリア細胞が増えるほか、補完するネットワークも働きます。

 

神経細胞の老化を防ぐには、こうした代償機構やネットワークの働きを高めることが大切です

 

いわば、衰える部分の周りを強化するので、筋肉がいいモデルになるでしょう。筋肉も使わなければどんどん衰えますが、鍛え続ければ70歳や80歳になってもある程度は維持できます。

 

プロ野球ロッテのエースだった村田兆治さんは、引退から30年が過ぎて70歳になっても、始球式に登場すると現役時代を思わせるようなマサカリ投法で速球を投げ込んでいます。60代以降も毎日、腕立て伏せ500回、腹筋と背筋を各1000回などのトレーニングを続けてきたそうです。何もしないか、鍛えるか。その差は大きいのです。

 

身体の筋肉を鍛えれば強く太くなるのと同じように、代償機構とネットワークを働かせることによって、脳の神経も機能を維持できます。筋肉と異なるのは、腹筋や背筋だけに絞るようなトレーニングができないことです。

 

つまり、脳全体の機能を高めるような工夫が必要です。そのためのキーワードは何かというと、自分自身の「意欲」です。何事にも貪欲に取り組もうという意欲こそ、脳の機能を維持する最大の秘訣です

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

アルツクリニック東京
 院長

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年よりアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。

1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。主な著書に『アルツハイマー病のことがわかる本』(講談社、監修)、『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)がある。

著者紹介

連載老年精神医学の専門医が教える「脳寿命を延ばす」秘訣

脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

新井 平伊

文春新書

近年、身体の寿命ははどんどんのびているのに、脳の寿命はのびていません。このアンバランスをどうにかしたい、ということで本書は書かれました。 本書では、まず、その脳の謎から説き起こし、なぜ、脳が老化するかについて…

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