こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

自分の健康は他のすべての人の共同責任である

インクルージョンとは「包括」という意味ですが、大多数の人たちがよければよいとするのではなく、理想としてはすべての人の利益になることを目指す考え方です。前述したとおり、台湾は国民皆保険制度である「全民健康保険」が1995年から施行され、毎月安価な保険料を支払うことで、誰もが高水準の医療を受けられるようになっています。なぜならば、「自分の健康は他のすべての人の共同責任である」と考えるからです。

 

台湾では今、離島や多くの先住民族の住む地域に医療体制の充実を拡張し続けています。そのために、先ほど述べたように台東の田舎のほうで5Gインフラの設置を進めています。教育の面でも医療資源へのアクセスの面でも、地域の人々が都市に住む人たちと同じ機会を得られるようにする必要があると考えているためです。その点で、台湾のセーフティーネットはかなりうまくいっていると思います。

 

起業したり自分が追求したいことを行おうとすれば、当然リスクを伴いますし、必ずうまくいくという保証はありません。ただ、たとえ失敗したとしても、少なくとも自分の健康や子供の教育が犠牲になることは絶対にないというのが、現在の台湾社会です。少なくとも、ここ15年はこういった堅実な社会が定着しています。

 

何事もそうですが、強いプレッシャーの下で競争を強いられると、相手に丁寧に接する余裕がなくなります。つまり、自分の精神の安定が失われてしまうのです。それは資本主義社会における競争原理の弊害とも言えるでしょう。自分の精神が健全で安定していれば、自然とスマートで礼儀正しい人間になれる。そういう余裕のある社会を台湾は目指しています。そのためにデジタルを積極的に有効活用していこうとしているのです。

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン

プレジデント社

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