いつの時代もなくならない相続トラブル。家族や親族の話し合いでなんとかなると思っていませんか? 岡野雄志税理士事務所のもとには、そんな「終活足らず」な方々からの相談が舞い込みます。本記事で紹介するのは「相続した家が手に負えなくなった」事例。 ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

「手に負えなくなった家」…対処法は5つもある

■田舎の実家を相続してから売ることは可能?

 

相続財産が遠方にある実家の場合、相続人として考えられる主な対処方法は以下の5つです。

 

(1)相続放棄または財産放棄(遺産放棄)する

相続放棄は、相続財産に対する一切の権利を放棄することを意味します(相続発生から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申請が必要)。なお財産放棄とは、相続人の話合いで本人が遺産配分を放棄することです。相続人全員が放棄した場合、相続財産の管理人選任を要し、管理人が決まるまで相続人の「管理義務」は続きます。相続財産管理人の選任は家庭裁判所への申立てが必要となります。

 

(2)自ら居住する

セカンドハウスとして利用するというのも、この方法です。しかしFさんのように、予期せぬ事態によって遠隔地のため居住や管理が困難になり、空き家化する可能性もあります。

 

(3)管理を委託する

空き家となった実家近隣に管理を依頼できる親戚や知人がいればよいのですが、いない場合は不動産会社やセキュリティ会社の「管理委託サービス」を利用することになります。もちろん有料ですので、それなりの費用を要します。

 

(4)賃貸にする

相続前に賃貸にしていれば、自用地ではなく貸付宅地となるので土地評価額が下がり、節税できる可能性もありました(ただし、自用地として「小規模宅地等の特例」を適用したほうが良いケースもあります)。しかし、建替えや修繕、維持管理の費用がかかりますし、都市部ならともかく、賃借人を見つけるのも困難です。

 

(5)売却する

不動産を売って売却益が出れば、譲渡所得税が課せられます。相続不動産にしても同様です。しかし、被相続人(亡くなった方)の居住用財産(空き家)の場合、譲渡所得の特別控除の特例が適用でき、譲渡所得から最高3,000万円まで控除可能です。特例の要件は以下となります。

 

□平成28(2016)年4月1日~令和5(2023)年12月31日の間に売却されたこと

□昭和56(1981)年5月31日以前に建築されたこと

□区分所有建物登記がされている建物でないこと

□相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと

□売却先が第三者であること

□売却金額が1億円以下であること

□売却物件は被相続人の居住家屋とその敷地等であること、または被相続人の居住家屋を取り壊した後の敷地等であること

□同一の被相続人から相続した家屋または敷地の売却について、この特例を受けるのは初めてであること

 

※詳しくは国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご覧ください(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

 

Fさんの実家はまだ「特定空家等」に指定された訳ではありませんので、小規模住宅用地の特例が適用でき、固定資産税の減額が可能です。

次ページ「田舎だし、古いし、売れますか?」最終結論は…

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