長生きすることによる3つのリスクが顕在化
長寿による「お金のリスク」とは
平均寿命が16年延びたということは、1960年の頃よりも16年分の生活費がかかると言うことです。1年間の生活費は、夫婦2人世帯では、月額24万円で計算をしてみると年間288万円です(総務省「家計調査年報2018年」)。
年間288万円×16年=4608万円
1960年に比べて約4600万円増えると言うことです。もちろん公的年金などがあるので、全額を自己資金として用意する必要はありません。しかし、それでも足りない分は老後資金から補塡するわけですから、より多くの資金が必要になってくるわけです。
これが、老後の大きな不安である「お金」の問題なのです。
長寿による「健康のリスク」とは
長生きをすると健康のリスクも高まります。健康寿命と平均寿命の差が広がっています。
1960年頃の健康寿命のデータは見つけることができませんでしたが、2016年の健康寿命は、男性では72.14歳、女性は74.79歳です。
健康寿命と平均寿命の差は、9年から12年あるということになります。つまりこの期間は、健康上の問題で日常生活に何らかの制限のあるわけです。
これは、医学や治療法の進歩によって、それまでは助からなかった疾病も治療ができるようになったためです。また、1960年頃にはあまり問題にならなかった介護や認知症も長寿になったからこそ、リスクが大きくなったとも言えます。
もし、介護が必要になったときには、公的介護保険を利用することになります。ですから、介護の備えと介護保険の知識がとても重要になってくると言えます。
長寿による「生きがいリスク」とは
前にも述べたように1960年代というのは、老後の期間が約10年でしたから、定年後は余生ととらえることもできました。近所ではご隠居さんと言う感じで囲碁将棋に興じる姿を思い浮かべてしまいます。
ところが、現在の定年後は現役時代に働いていたよりも長い時間が待っています。この時間を余生で片づけてしまうと後悔をします。一日中、時間を持て余して、朝から晩までテレビを観ているには、あまりに長い時間です。
「第二の人生」と考えないともったいない生き方になってしまいます。
また「孤独」という問題もあります。人は「孤独」になかなか耐えられるものではありません。「孤独感」に苛まれると寿命も短くなりますし、認知症の発症リスクも高くなるという研究結果もあります。なによりも「バラ色の老後」とは言えないでしょう。
定年後の「第二の人生」を愉しく過ごすためには、定年前からの準備も大切です。
老後資金を貯めるのには、それなりに長い間の貯蓄や運用が必要になります。「生きがい」見つけるのは、定年後から初めてもすぐにできるものでもありません。定年前からの準備が必要になってきます。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員
福岡 武彦
1株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士
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