ADHDの様相が強くなり…負のスパイラルに
そして、初診の時に来た祖母がとにかくH君の言うことを聞き、なんでも買い与えていたことがわかりました。そのような理由で、H君は母親よりも祖母に懐いていたのです。これでは良くないと考え、母親は実家から出る決断をしたのです。
一家5人でアパートに落ち着いて生活し始めた時に、母親が園にも注文をつけたこともあって、H君は落ち着きを取り戻し、秋の運動会でも園の先生たちが驚くほど上手に参加できたようです。
今まで毎日あった園からのクレームの電話も嘘のようになくなりました。母親は園が遠慮して電話しないのかと最初は疑うほどだったと言います。
そして、祖母から母親へ甘えるようになりつつあるようです。大家族から小家族になり、急に周りが静かになった。そして、なんでも言うことを聞いていた祖母から離れたことで、自我が目覚めて落ち着いたものと考えられます。母親が園に注文をつけた勇気と、父親と協力して実家の大所帯&世話焼き祖母から離した勇気がH君を救ったのです。
母親に叩かれていたH君は、愛情遮断により、さらにADHDの様相を強くしてしまいました。そしてそれが原因で園での生活がうまくいかず、園からのクレームの電話が絶えない。そのことによって、さらに母親は苛立つという負のスパイラルに陥っていました。
それが、H君を祖母から離すことで母親に懐くようになり、また、おとなしくなったことで園からのクレームもなくなり、母親の苛立ちが消え、親子として久しぶりに向き合えるようになったのです。大家族はにぎやかで楽しいという面もあるでしょうが、H君にとっては、うるさく、落ち着かない環境だったのかもしれません。そしてなんでもH君の言いなりになって買い与えてくれた祖母の存在も、彼にとっては決していい環境だったとは言えなかったのです。
これを学校に譬(たと)えると、大家族が本学級で、今の5人暮らしのアパートが特別支援学級にあたります。そして、H君の言いなりになっていた祖母は、園の優しいメリハリのない担任のようなものだったのです。学校でも家庭でも少人数で育て、優しくもメリハリのある大人のいる環境が発達障がいを抱えたお子さんには必要だということなのです。
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