発達障がいについて語られることが多くなった昨今。本記事では書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「こころの問題」をひも解いていきます。

祖母だけに懐くH君。母はたまらず…

9月初めにそれをみかねた母親が、園長と担任に「いけないことをやったら黙って見逃さないで、園でもっとメリハリをつけてダメなものはダメと言って叱ってください」と注文をつけたそうです。これが功を奏し、H君は次第に落ち着くようになったのです。薬を使わずに、「園での落ち着きがない」という一つの問題はこれであっさりと解決しました。

 

どのお子さんも厳しい担任よりは優しい担任の方が好きなものです。あまり厳しすぎる担任だと、発達障がいを抱えたお子さんは、担任への嫌悪感から学校に行くのを嫌がるようになったり、怒られてばかりいることによって自尊心を傷つけてしまったりする傾向が他のお子さんよりも強いので、注意が必要です。

 

しかしあまり優しすぎて、やってはいけないことも見逃してしまう担任では、お子さんは足元を見てしまい、好き勝手に行動してしまいます。何も注意されないことでH君は、自己中心的な行動に走ってしまい、落ち着かなくなったと考えられます。優しくしながらも、ダメな時はダメとしっかりと叱るといった、「メリハリのある態度をとる」ことを家族も心がけてください。

 

ただし、叱った時に、どうしたら良かったのか指導してあげたり、次にできたら褒めてあげたりと、お子さんへのフォローを忘れないようにしましょう。

 

話をH君に戻します。もう一つ情緒不安定という問題がまだ残っています。

 

H君の情緒不安定なところは、ADHDというよりは、ADHDの症状を呈した愛情遮断(反応性愛着障がい)が原因と考えられます。

 

解決するには時間をかけて、医師がお子さんだけでなく、母親からも親身になって話を聞いてあげることです。そうすることで、母親自身がお子さんに抱いている誤解が解けていきます。母親は祖母にだけ懐(なつ)き、園で落ち着きのないH君に対して、毎日苛立ちがあったに違いありません。そして、「どうして、言うことを聞いてくれないのだろう……」「この子は私のことを嫌いなのかも……」という誤解を抱くようになり、H君を叩いてしまったのです。

 

発達障がいの症状であったり、環境であったり、発達障がいを抱えたお子さんの行動には、何かしらの理由があります。

 

決して、ご自身やお子さん自身が悪いわけではないことを、H君のお母さんに語って聞かせていました。すると、徐々に冷静にH君のことを見られるようになり、母親はH君がこのまま大所帯の中で祖母に甘えて育つこと、H君が自分から離れていってしまうことに不安を覚え始めたのです。

 

しばらくして、母親の口から、春に弟2人含めた家族5人で父親の実家を出た話が出ました。

 

よく聞いてみると、今まで父方の実家に家族5人、そして叔父の家族や祖母を含めた計12人家族の大所帯の中での生活だったそうです。

 

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新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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