
こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。
デジタル技術は「誰でも使える」ことが重要
もしも高齢者が不便を感じるのであれば、それはプログラムの問題であったり、端末機器の使い勝手が悪かったりするからでしょう。そんなときはプログラムを書き換えたり、端末を改良して、高齢者が日頃の習慣の延長線上で使えるように作り方を工夫すればいいのです。
つまり、高齢者に合わせたイノベーションを行うのです。
そのためには、プログラマーが使用者の側に寄り添って考える創造力を養うことも大切です。その手っ取り早い方法は、プログラムやアプリを開発するプログラマーを自分の設計したプログラムから最も縁遠いと思われる人たちの集団に送り込むことです。そうすれば、「彼らが何を使えないのか、なぜ使いにくいのか」という感覚を明確に理解することができるでしょう。プログラマーの側に自ずと「同理心(共感、シンパシー)」が備わってきます。
実際に、私はプログラマーに対して開発の方向性を設定する際には、必ずその理想のプロセスを経るように呼びかけています。理想のプロセスとは、「そのプログラムを使う人を訪問してヒアリングさせてもらう」というものです。これまでプログラマーの問題点とは、彼らの成長してきた背景がほとんど変わらず、年齢もほとんど同じで男性が多い、というものでした。広くヒアリングを行うといっても、結局は自分たちとそれほど変わらない人たちの間で開発が行われてきたわけです。これでは万人に役立つものは作れません。
プログラマーの住む場所が様々で、あるいは開発チームのメンバーが様々な年代によって構成され、異なる文化を持ち、出身も異なっていれば、ブレーンストーミングの際に多角的な意見が出され、自ずと各種の異なる需要にも応えなければならないでしょう。そこから、誰にでも使いやすいものが生まれてくるのです。
オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
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