※本記事は書籍『相続大増税の真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

81歳の亡父「アレをやっておけばよかったのに…」

●やっておけばよかった対策

 

こうした手続きの苦労を相続人たちにさせないためにも、被相続人は「公正証書遺言書」を残しておくべきでした。

 

今回、鈴木さんの父親が生前に公証役場で公正証書遺言書を作成していれば、検認を受ける一連の手続きを省けるだけでなく、分割協議の問題を解決できたはずです。公正証書遺言書があれば、長男1人の手続きで自宅不動産の名義を自分に変更できるからです。

 

公正証書遺言書が作成されていた場合、遺言執行者または財産をもらう長男が、その遺言書と自らの印鑑証明書と実印などを持ち、司法書士に自宅の登記をお願いできます。そうすれば、他の相続人の了解や実印をもらわなくても名義を自分にできます。

 

仮に2人の姉から「遺留分の侵害額請求」があったとしても、相続財産合計が4200万円なので、4200万円×(3人の法定相続分)1/3×1/2=700万円を上限として支払うことで解決できます。遺留分の侵害額請求とは、遺言書によって遺留分を侵害された相続人が、相続財産の返還を請求することです。

 

もし次女が「私は相続放棄をする」などと言ってくれれば、長女に700万円を支払って解決できます。現金が1200万円あるので、その範囲内でうまく収める方向に運べるはずです。

 

今回の事態があらかじめ予測できた場合、父親の生前中に、長男の妻を父親と養子縁組しておくべきでした。なぜなら今回のような家庭のケースの場合、父親の面倒を看る負担が長男の妻に一番かかりやすいからです※。

 

そうして養子縁組をしたうえで、公正証書遺言書を作成していれば、仮に姉2人から遺留分の侵害額請求があったとしても、4200万円×法定相続分1/4×1/2=上限が525万円となり、解決できる範囲で収まります。さらに父親の生前中、預貯金を長男の家族全員に生前贈与していれば、ほとんどの問題を事前に解決できていたはずです。

 

もちろん、これらは考えられる対策を述べたまでで、実際にはそれぞれの家庭の事情を考慮に入れた対策が求められます。相続対策はオーダーメイドで進めるべきだからこそ、家族の人間関係を一番に考えなければなりません。

 

※編集部注・・・相続法の改正により、2019年7月1日から「特別寄与料」を請求できるようになった。相続人以外の親族で被相続人に対して特別な寄与をした者(長男の嫁等)は、相続人に対して金銭を請求できる。ただし、特別寄与者と相続人との協議により決定するため、話がまとまらないケースも多い。

 

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