新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の再発令は、人々の暮らしに多大な影響を及ぼしています。今回は、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が、コロナ禍の結婚式中止に関わる「キャンセル料」の支払い義務について解説します。

過去の裁判例から「キャンセル料支払義務」を考える

約款、契約上のキャンセル料の規定のとおりに、全額を支払う義務はあるのでしょうか。

 

消費者契約法9条1号に従い、「平均的な損害」を超える部分の支払義務は無効になる(払わなくてもよくなる)のですが、「平均的な損害」とは何かについて、単に式場側で費用負担済みの実費部分だとすれば、キャンセル料の大半が戻ることになります。

 

実際はキャンセル料のなかに「キャンセルされなければ他のお客様と契約して得られたはずの利益(=「逸失利益」)が含まれています。開催日からはるか前ならば他の方に利用させて利益をあげることができる一方、開催日に近づけば他の申込が得られる可能性は近くなります。そのため、開催日に対してキャンセルが近づけば近づくほどキャンセル料は高くなります。

 

では、新型コロナウイルスで直前キャンセルを迫られた場合、高額なキャンセル料の支払い義務があるのでしょうか。

 

コロナの関係から、キャンセルしても今新たに別の顧客が利用する可能性は高くないように思われます。そのことによって「平均的損害」の額は下がるのでしょうか。新型コロナウイルスについて、この点について明示的に示した裁判例は未だないため、今回は、新型コロナウイルス発生前に、過去に式場のキャンセルをめぐって争われた事例を見てみます。

京都地裁平成26年8月7日判決(判時2242号107頁)

この裁判例では、平均的損害は、次の式により計算するものされました。

 

式場がキャンセルにより失った「逸失利益」-式場がキャンセルにより免れたコスト「損益相殺すべき利益」=平均的見積・請求額 × 粗利率% × (1ー再販率)

 

これによると、再契約に至る確率が1に近ければ近いほどホテル側に損害は出ないわけですから「平均的損害」の額は小さくなりますし、再契約に至る確率が低ければ低いほど、ホテル側に損害が出やすくなるのですから、「平均的損害」の額は大きいことになります。

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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