「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているという。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

損失の繰越しが活きるのは初期投資の多いビジネス

一方、「損失の繰越し」は「未来に向けて損失を送る」ということ。翌年以降、最長3年間、赤字を繰り越すことができます。令和元年分から繰り越した赤字があれば、これを令和2〜4年分の確定申告に活用できるということです。

 

小林義崇著『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!』(河出書房新社)
小林義崇著『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!』(河出書房新社)

損失の繰越しが活きるのは、初期投資の多いビジネスです。お店を開くなど、創業当初に出費が重なるケースでは、出費をした年に十分に利益が出ないことが一般的でしょう。そうしたときに損失の繰越しをしておけば、そのあとに利益が出たタイミングで赤字を活かすことができます。

 

赤字の繰越しや繰戻しが活きてくるのは、損益通算しきれないほどの赤字があるケースに限られます。そういう機会は多くはないかもしれませんが、個人でビジネスをしていると、将来を完全に予測することはできません。

 

事業所得の赤字を確定申告することは、ある意味で保険をかけるようなものです。もし赤字が出たのであれば、とりあえず確定申告をしておけば、将来の税負担リスクを軽減することができます。

 

しかも、住民税や国民健康保険料の計算にも事業所得の赤字は影響しますから、忘れずに申告しておきましょう。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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