「相続時精算課税制度」とは、「生前贈与をするときは2500万円まで贈与税を非課税にしますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税しますよ」という制度です。今回は、この相続時精算課税制度のメリット・デメリットを、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士がわかりやすく解説していきます。

メリット3:事業承継税制の納税リスクが抑えられる

「事業承継税制」は、会社経営者や上場していない会社の株式を持っている人のための税金優遇制度です(あてはまらない人は、メリット3と4は飛ばしてください)。

 

事業承継税制を贈与で使う場合、暦年課税と相続時精算課税のどちらを使うほうが有利だと思われますか?

 

結論は、相続時精算課税が有利になる可能性が高いです。その主な理由は、納税が確定した場合の贈与税支払いでは、相続時精算課税が有利であるためです。

 

事業承継税制では、適用をスタートしてから、5年間必ず守らなくてはいけないルールがあり、5年経過後以降も、最初の5年間に比べると少し緩くなりますが、守るべきルールがあります。

 

そして、これらのルールに違反してしまうと、猶予されていた贈与税と、利子の合計を、2か月以内に支払わなくてはいけません。

 

この際、もともと暦年課税で贈与をしていると、最大55%の贈与税率で計算した贈与税と、その贈与税をベースに計算された利子の合計額を、支払わなくてはいけません。

 

一方、相続時精算課税で贈与されていれば、株価が2500万円までは無税で、超える金額に対する税率も20%です。さらに、将来、贈与した人が亡くなれば、相続税として計算し直され、支払い済みの贈与税は、相続税から控除されますので、実質負担は、利子部分の負担のみということになります。

 

納税が確定した場合では、暦年課税よりも相続時精算課税のほうが、圧倒的に有利ですね。ただ、実際には、株価が下落して株式を売却した場合や、株を貰った子どもが、株を渡した親よりも先に死亡したケースなども考える必要があります。

 

実行の際には、事業承継に強い相続専門税理士にご相談されることをおすすめします。

メリット4:株価対策をして非上場株式の贈与も可能

相続時精算課税制度の特徴の1つ「贈与時の金額で、相続税を計算する」という点を利用し、株価対策をした非上場株式を贈与するというスキームもメリットがあります。

 

こちらは、デメリット5つ目の「贈与後、財産の時価が下落したり、財産自体がなくなってしまっても、贈与時の時価で相続税を計算しなければいけない」点と対比して考えると、スムーズに理解できるでしょう。

 

非上場会社の株価は、対策をすることで、一時的に低く評価することができます。その仕組みを利用して、一時的に株価を低くした状態で、相続時精算課税制度を使って株式を贈与し、その後株価が上昇しても、相続税の計算上は、低く計算された贈与時の株価を使うことができるというトリックです。

相続時精算課税を適用しても「相続放棄」できるのか?

最後にクイズです。相続時精算課税制度を適用してから、父が保証人となって多額の借金を抱えた場合、相続の時に、相続放棄はできるのでしょうか?

 

答えは、できます。

 

しかし、父親の借入れがあること、または今後生ずることを知って、生前贈与を受けていた場合には、詐害行為取消権で贈与自体が取り消される可能性がありますので、気を付けてください。

 

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