「相続時精算課税制度」とは、「生前贈与をするときは2500万円まで贈与税を非課税にしますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税しますよ」という制度です。今回は、この相続時精算課税制度のメリット・デメリットを、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士がわかりやすく解説していきます。

デメリット4:贈与税申告を忘れたら命取りになるかも

相続時精算課税制度では、次の2つの特典があります。

 

①2500万円まで無税
②2500万円を超えた金額については20%の税率で贈与できる

 

この「①2500万円まで無税」という特例は、申告期限内に贈与税申告をした場合に限られます。

 

つまり、申告期限までに贈与税申告をしなかった場合には、この「①2500万円まで無税」という特典は利用できず、「②2500万円を超えた金額については20%の税率で贈与できる」という特典しか利用できないのです。

 

たとえば、

 

X1年:父から子へ500万円贈与

→贈与税の申告期限内に届出と贈与税申告書を提出したので、贈与税0円

 

X2年:父から子へ2000万円贈与

→贈与税申告書を申告期限内に提出することを失念

→2000万円×20%=400万円の贈与税

(申告期限内に贈与税申告書を提出していれば0円だったのに……)

 

いずれにしても、相続税の計算の際に、相続時精算課税制度で支払った贈与税は控除されますので、相続の時まで長い目線で考えれば損ではありませんが、目先で400万円も出費となると、資金計画が大きく狂います。

 

申告期限内に贈与税申告書を提出することを、徹底しましょう。

デメリット5:財産の時価下落は贈与時の価格で再計算

デメリットの5つ目は、「贈与後、財産の時価が下落したり、財産自体がなくなってしまっても、贈与時の時価で相続税を計算しなければいけない」ことです。

 

たとえば、会社の株式を相続時精算課税制度で贈与するケースを考えてみましょう。

 

X1年5月1日に、父から長男が、会社の株式を相続時精算課税制度で取得し、社長にも就任しました。長男は、その後会社を一生懸命経営しましたが、業績は悪化し、株価は下落の一方。X10年10月1日に、父が他界します。

 

この場合に、父の相続税を計算するときに使う株価は、贈与時であるX1年5月1日と、父が死亡したX10年10月1日のどちらの時点の金額でしょうか?

 

答えは、贈与時です。

 

そのため、相続時精算課税制度は、贈与した時よりも、贈与した人が死亡した時の金額が上昇する場合には、お得ですが、上記の例のように、金額が下落する場合には、相続時精算課税制度を使って贈与したことが、あだとなります。「相続まで待って株式を取得したほうが、お得だった!」ということです。

 

しかも、相続税を計算する仕組み上、株式を贈与でもらった長男以外の相続人の相続税も上昇することになるので、ダブルパンチです。

 

また、たとえば、家をもらったけれど、火事で家が燃えてしまったような場合でも、贈与時の家の金額を相続税の計算に含める必要があります。

 

世知辛いですが、これが相続時精算課税制度の仕組みです。

 

【豆知識(上級編)】
なお、相続税法では、上記のように取扱いますが、民法で特別受益の持ち戻しをする際には、財産を貰った人の故意ではなく財産が滅失等した場合には、そもそも贈与がなかったものとみなされます。

 

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