日本の相続財産は土地・家屋が4割近くを占めます。手元に豊富な資金があればよいのですが、相続したのが不動産のみで納税できない場合、どうしたらよいか。遺言書によって姉には実家、弟には現金を遺産配分したために揉めてしまった事例と、その解決方法を税理士の岡野雄志氏が紹介します。

「お金の切れ目が縁の切れ目」血縁でも…

Eさんの娘さんは、離婚後、実家で両親と暮らすようになりました。やがてEさんの奥様、そしてEさんが、娘さんに看取られながら亡くなりました。

 

娘さんは20年近くにわたって両親の看護や介護に追われ、仕事に就くこともできませんでした。もっとも、Eさんには充分な蓄えがありましたので、生活費や医療費に困ることはありませんでした。

 

Eさんには、もう一人、娘さんの下に息子さんがいました。ご自身でローンを組み購入した都心のマンションで、奥様と小学生になる二人のお子さんと暮らしていました。

 

Eさんは「娘には自宅を、息子には現金や有価証券」をという公正証書遺言を記して他界されましたが、ここで一つ問題が発生しました。娘さんにはほとんど預貯金がなく、相続税の現金納付ができなかったのです。

 

娘さんは弟さんに対して現金の配分を頼みましたが、ローンと家族を抱えている弟さんも譲れません。それどころか、「姉さんは派手な結婚式を挙げて、その費用やヨーロッパ一周のハネムーン費用まで父さんに出してもらっていたじゃないか」と、過去のことまで持ち出してきました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

通常の学費や一般的な結婚祝い、生活費などは贈与に当たりませんが、豪華な婚礼や海外への旅行費用を亡父が出していたとなると、「特別受益」にあたる可能性があります。「特別受益」は贈与額として法定相続分から差し引かねばならず、娘さんの遺産配分は減ってしまいます。

 

これに対して、娘さんは「寄与分」を主張しました。「寄与分」とは、被相続人(亡くなった方)の財産形成に貢献したり、被相続人の療養看護に努めたりしてきた相続人に対して、法定相続分に寄与分の額が上乗せされる制度です。

 

かくして、かつては仲の良かった姉と弟が、父親の相続発生をきっかけとして揉めに揉め、「争族」へと突入していってしまったのです。

 

遺言書がある場合、被相続人(このケースではEさん)のご遺志が優先され、遺言内容に従って遺産分割されます。しかし、法定相続人が遺言書の内容に不服を感じた場合、家庭裁判所にその遺言書が有効か無効かの調停を申し立てることができます。

 

こういう場合は、いったん遺言書通りの遺産配分で申告し、相続人それぞれが相続税を納税することになります。では、Eさんの娘さんのように現金納付できない場合は、どうしたらよいのでしょう?

 

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