もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

各フロアごとに別ホームだと理解してもいい

入居者獲得に熾烈な大都市圏であっても、さまざまな理由で入居をホーム側から断られるケースはあります。とくに昨今では、介護職員不足により、受けたくても受けられないというホームも少なくありません。

 

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)
小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

これはなかなか理解が難しいところもありますが、職員配置と現入居者の状態とを考えた場合、「現在2階フロアであれば認知症入居者を受け入れることはできますが、1階フロアでは受けることはできません」というケースは実に多く見られます。これは、老人ホームの運営上、やむをえないところなのかもわかりません。

 

簡単に説明します。多くの老人ホームでは3階建てから5階建てのホームが多いと思います。大都市圏であっても10階建ての老人ホームなどは、一部の自立系の老人ホーム以外では、めったにお目にかかれません。

 

地価の高い大都市圏において土地の有効利用という観点から考えた場合、高層階にしたほうが合理的です。しかし、老人ホームでは「上に高く積む」という思想は薄いと思います。介護職員の動線を考えた場合、横動線は容易ですが、縦動線が入ると途端に介護フォーメーションの難易度が高くなってしまうからです。つまり、老人ホームとは各フロアごとに完結された介護フォーメーションになっているのだと、まずはご理解ください。

 

極論すればフロアごとに別ホームだと理解してもよいと思います。各フロアに入居定員は20名、したがって職員は5名の配置、というようにフォーメーションを作ります。そしてこの20名と5名の関係性は、入居者20人を5名の介護職職員で対応するには、20人の全入居者のうち、自立高齢者5名、認知症高齢者10名、身体介護高齢者5名というような内訳にならないと5名の介護職員では無理であると理論づけるのです。

 

したがって、空室があるにもかかわらず入居をホーム側から断られるケースの多くは、これ以上認知症の入居者を増やしてしまうと、職員を6名に増やさなければならなくなるというホーム側の都合によるものがほとんどです。

 

私がここで言いたいことは、「断るのも親切」ということです。つまり、受け入れる余力はあるものの、入居者の性格や考え方、状態などを総合的に考えた場合、当ホームに入居するよりも他のホームに入居したほうがよいという判断です。または、今まで通り自宅で工夫すれば生活ができるのでは?という判断で入居を断るという親切が必要な時代になってきているということです。これらの良質のホームを、くれぐれもホーム側の都合、職員側の都合で断っているホームとは一緒にしないでください。

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親を老人ホームに入れようと思った時に読む本

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