エスプレッソの「強烈な苦味と刺激」の正体は?
個体差は確実にあるのでしょうが、少なくともエスプレッソのために育てられたロブスタ種には、クロロゲン酸もアラビカ種よりも多く含有されています。
少量のエスプレッソをショットで飲むと、非常に強い刺激的な苦味を感じるでしょう。普通はこの強い苦味はカフェインによるものであり、苦みの強さはカフェインの強さに比例すると思われがちですが、エスプレッソのカフェインは多少の苦味はあってもほぼ味が感じられないです。
東京薬科大学名誉教授でコーヒー研究家でもある岡希太郎先生の見解では、カフェインは1000倍に希釈すると無味になるとか。この説に従うとエスプレッソに含まれているカフェインは、人間の舌ではほぼ感じられない量にすぎません。
エスプレッソの強烈な苦味と刺激の要因はカフェインではなく、ロブスタ種がアラビカ種よりも多く含有しているクロロゲン酸の焙煎で生まれる苦味なのです。
ロブスタ種はクロロゲン酸が多い分、焙煎したときに苦味が強く出やすくなります。エスプレッソ用に高温で豆を焙煎すると、豆のアミノ酸と糖質が反応するメイラード反応が起こり、メラノイジンと呼ばれる褐色物質(コーヒーから生じる同様の物質はコーヒーメラノイジンと呼ばれて区別されています)が生じます。
メラノイジンは界面活性物質を含んでいるため、これもきめの細かいクレマを長く強く立たせる要因となります。また高温で焙煎するとクロロゲン酸が多いロブスタ種ならではの苦味とコクがエスプレッソの風味を豊かにします。
スターバックスに代表されるシアトル系のエスプレッソでもロブスタ種を使わず、アラビカ種100%でエスプレッソを淹れるのが当たり前になっているようです。
日本では、ロブスタ種=安物という誤った古い認識のままなので、ほとんどのコーヒー店ではロブスタ種をまったくブレンドしないで、アラビカ種の単一品種のみを使うシングオリジンが好まれています。その流れをくんでいるため、日本のエスプレッソはロブスタ種を配合しないアラビカ種のシングルオリジンがほとんどです。
日本のコーヒーのプロたちはエスプレッソではなく、あくまでコーヒーを基本にすべてを考えています。このためロブスタ種の重要性を見出せないままでいます。需要がないので、ロブスタ種の生豆を扱って輸入する会社もほぼないのです。ロブスタ種で淹れたコーヒーが飲みたいと思って探し歩いても、一般の人がほぼロブスタ種のストレートコーヒーを飲むチャンスはほぼないでしょう。
そうなると供給するプロ側も、需要のないロブスタ種をあえて探す意味がありません。日本では輸入会社がロブスタ種を軽視しているので、一般の人はもちろん、カフェ経営者でもロブスタ種はストレートで飲めないのが現状です。
対照的に日本以外の欧米諸国では、いまロブスタ種のグレーダーのテスト「Rグレーダー」が注目されています。こうした動きを背景に、近い将来は日本でもロブスタ種の重要性が見直されるかもしれません。
齊藤 正二郎
ダブルトールカフェ 代表
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